2019 Fiscal Year Research-status Report
Polymer hydrogel-based development of new therapeutic strategies targeting cancer stem cells
Project/Area Number |
18KK0433
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
椨 康一 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 助教 (10466469)
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Project Period (FY) |
2019 – 2021
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Keywords | がん幹細胞 / ポリマー / 細胞内重合 / モノマー / ケミカルプローブ / ハイスループットスクリーニング / オルソゴナルライブラリー / ケミカルオンコロジー |
Outline of Annual Research Achievements |
がん幹細胞の新たな制御技術の開発を目指して、エジンバラ大学化学分野との国際共同研究を推進している。2019年度は他課題において膠芽腫がん幹細胞内に存在する抗がん剤耐性の亜集団を可視化し、それらに対する機能性の高分子化合物(合成ポリマー)を取得した。そこで本課題ではこれらヒットポリマーの中枢神経系疾患への適応、およびそれによる膠芽腫がん幹細胞の制御法開発を目的としてエジンバラ大学へと出向し、細胞内重合技術の開発を進めた。膠芽腫に対する細胞内重合条件を決定するため、多種モノマーの中から分子量500以下且つ生体適合性の高いと考えられるモノマー群を選別した。患者由来細胞(PDC)株を用いて各モノマーの50%増殖阻害濃度(IC50)を測定し、中でもIC50の高い9種類のモノマー群を特定した。機能性ポリマーを生成するモノマー種を決定するスクリーニング系を構築するにあたり、そのハイスループット性を高めるため、9種類のモノマー群を縦横3種類のモノマーから構成されるオルソゴナル(直交)サブライブラリへ分類した。うち2種類のサブライブラリーの組み合わせ(1反応あたり計6種類のモノマーが存在する縦6組横6組の反応)による細胞内重合スクリーニングを実施した。膠芽腫PDCに対して異なるライブラリーの組み合わせが異なる増殖抑制効果を示すことが明らかとなった。以上の結果は細胞内で重合されるポリマーががん幹細胞の特性解明と制御に有効なケミカルプローブとして機能し得ることを示唆しており、がん幹細胞の新たな研究手法を開拓できた点で有益な成果と考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
国内においてがん幹細胞の標的亜集団を可視化し、それらに機能性のヒットポリマーを取得するという当初の研究計画を達成できた。これにより海外共同研究機関であるエジンバラ大学への渡英が実現し、がん幹細胞へと応用可能な新たな研究手法を日本に導入することができた。さらに重合するモノマー種の組み合わせ次第で細胞表現型に変化を生み出せることが明らかとなり、新たながん幹細胞の研究手法として今後飛躍的な展開が期待できる状況となった。一方、新型コロナウイルスの感染拡大に伴うエジンバラ大学の閉鎖により帰国を余儀なくされ、ヒットゲルの物性解析や細胞外プローブの合成などを断念した。
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Strategy for Future Research Activity |
細胞内重合プローブを用いたがん幹細胞の特性解明を進めるために、モノマーライブラリーの拡大やモノマー濃度、モノマー取り込み時間、UV照射量などの重合条件についてより詳細な条件検討を進める。また増殖のみならず、浸潤や抗がん剤抵抗性などその他の重要ながん幹細胞表現型についてもポリマー重合の効果を検証する。担がんマウスにおいて放射線等を用いた光重合ならびに重合後のポリマー解析技術などを確立することで個体レベルでの機能的スクリーニング法を構築し、がん病態の理解と標的分子の同定を目指す。これにより新規学際領域「ケミカルオンコロジー」の分野を開拓する。
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