2020 Fiscal Year Research-status Report
肥満・加齢における骨格筋の質的量的制御メカニズムの解析
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18KK0462
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
野村 和弘 神戸大学, 医学部附属病院, 特定助教 (70450236)
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Project Period (FY) |
2019 – 2021
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Keywords | 骨格筋 / 運動 / 肥満 / サルコペニア |
Outline of Annual Research Achievements |
代表者がこれまでに独自に作出した骨格筋特異的β2アドレナリン受容体欠損マウスは、「運動効果に抵抗性を示す」すなわち運動による骨格筋の代謝改善効果が消失したマウスであった。本マウスの解析により、骨格筋のβ2アドレナリンシグナルは骨格筋のエネルギー代謝に重要な役割を担うことが明らかとなっている。また肥満モデル動物の骨格筋では、β2アドレナリン受容体の遺伝子発現が低下し、アドレナリン感受性の減弱、いわば「アドレナリン抵抗性」というべき状態が生じていた。この時、肥満モデル動物の骨格筋のβ2アドレナリン受容体遺伝プロモーター領域ではDNAが高メチル化状態にあり、これによりβ2アドレナリン受容体遺伝子の発現低下をきたし、「アドレナリン抵抗性」の原因となる可能性が考えられた。さらにヒト骨格筋生検試料を用いた解析でも、肥満者ではβ2アドレナリン受容体遺伝プロモーター領域のDNAが高メチル化状態にあることを見出した。また、肥満外科手術後の患者骨格筋では、その高メチル化状態が改善していることも明らかとなった。これらの結果から、肥満ではエピジェネティックな制御によりβ2アドレナリン受容体の遺伝子発現の低下をきたし、エネルギー消費の減弱をもたらす可能性が考えられた。 またこれらの解析をすすめる中で、骨格筋特異的β2アドレナリン受容体欠損マウスは、加齢に伴って骨格筋のリモデリング能が低下し、筋量の減少を認め、サルコペニアを促進するマウスであることも見出している。従来、運動能力の瞬時の活性化に寄与すると考えられてきた骨格筋のアドレナリンシグナルが、体重や骨格筋量の制御、さらには骨格筋のリモデリング能に重要な役割を担い、これらのシグナルの減弱が肥満のみならずサルコペニアの病態形成に関与すると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本国際共同研究により、骨格筋のアドレナリンシグナルの生理的意義と肥満によって生じる「アドレナリン抵抗性」の発症機構と病理的意義についての解析が大きく進展した。肥満者の骨格筋試料を用いた解析を通じ、モデル動物で得た知見のヒト試料での検証も進み、順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
骨格筋のアドレナリンシグナルの生理的意義と肥満や加齢によって生じる「アドレナリン抵抗性」の発症機構と病理的意義についての解析を引き続き進める。これまでに行ってきた肥満者の骨格筋試料を用いた解析のみならず、2型糖尿病、サルコペニアなどの様々な病態のヒト骨格筋試料を用いた解析を通じ、モデル動物で得た知見のヒトへの外挿性の検証を進める。さらに、運動依存性に骨格筋で活性化される因子を網羅的に解析したデータベースや肥満・糖尿病患者の骨格筋の遺伝子メチル化情報データベースから「骨格筋アドレナリン抵抗性」に関与する可能性のある候補因子の探索を試み、これらの候補因子の中から、肥満、糖尿病、サルコペニアの治療標的となりうる新規分子・経路の同定を目指す。
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Research Products
(6 results)