2019 Fiscal Year Research-status Report
自然災害と武力紛争:武力紛争下における自然災害の発生とその実証分析
Project/Area Number |
18KT0009
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
冨永 靖敬 法政大学, 経済学部, 准教授 (40779188)
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Project Period (FY) |
2018-07-18 – 2021-03-31
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Keywords | 国内武力紛争 / 自然災害 / 国際安全保障 / 計量政治 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,武力紛争継続地域と自然災害発生地域が重複しているという観察のもと,自然災害が武力紛争の帰趨に如何なる影響を与えるのかを分析することを目的としている。特に,災害に直面する武装組織への影響が組織によって異なる点に着目し,自然災害という外生的なショックに頑強な組織,脆弱な組織を分ける要因,そのメカニズムを明らかにしようと試みる。
2019年度は,前年度行った分析結果を研究論文として纏めたのに加え(国際誌で査読中),前年度の世界的なマクロレベルでのデータの収集・分析とは異なり,特定の地域(ここではミャンマー)に焦点を当て,ミクロレベルでの紛争と自然災害との関係の分析に焦点を当てた。具体的には,ミャンマーは十以上の武装組織が活動してきたことに加え,アジア地域でも有数の災害発生国であり,武装組織の多くもその影響を受ける。本研究では,ミャンマーのミクロレベルの災害情報を収集・調査し,武装組織間の同盟・分裂のメカニズムを明らかにしようとしている。
以上の目的を実施するため,まず国際災害データベース,ミャンマー政府が公開する災害データ,またLexis-Nexis等からミャンマーの災害に関する情報を収集し,ミクロレベルのデータベースを構築している(継続中)。さらに,ミャンマーの武装闘争の歴史,武装組織の合従連衡のメカニズムに関する先行研究を調査することを通して,自然災害という外的ショックによる組織間の同盟・分裂のメカニズムを分析している(継続中)。本年度は,前年度の実績を修正した研究結果をInternational Studies Associationアジア大会,アメリカ政治学会で発表することができたが,その後(2020年3月)に予定されていた国際学会はコロナウイルスの影響で中止となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前年度報告書で指摘した通り,本研究の遂行(特にデータの収集)のため,リサーチ・アシスタントを採用する予定であった。本年度一人の学部生の採用はできたが,データの収集は終えておらず,またデータの十分な精査もできていない。また採用したアシスタントも今年度卒業を迎え,新たな人員の確保に務めている段階である。さらに,国際共同研究研究者の所属先がシンガポールから台湾へと代わり,その準備・セットアップのため,研究の共同遂行が難しい期間もあった。以上の点から「やや遅れている」との評価をした。
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Strategy for Future Research Activity |
先述の通り,本研究の遂行のためさらに人員の確保(特に大学院生以上)に務める予定である。しかし,現在の研究代表者の研究施設が都心から大きく外れた郊外にあることに加え,勤務のために来校することが条件となっている(リモートは不可)所属先のルール上,十分な人員の確保が難しい状況に陥っている。新型コロナウイルスによってこれらの点もさらに悪化している。今後,新型コロナウイルスの影響がどこまで継続するかにも依存するが,現在は,研究計画を一年延ばすことを前提に研究計画を再構築しており,人の移動が自由となった場合には,都心に別途レンタルオフィス等を借りることにより,通勤の利便性を向上し,人の採用(それによる研究の進展)を行えるよう計画している。
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Causes of Carryover |
当初申請計画通り,本研究の遂行のため,GDELTという大規模データベースを用いた災害情報の抽出を行い,そのためのサーバ利用料やソフトウェア利用料を算出していた。しかし,今年度学会発表の機会にGDELTというデータベースが抱える数々の問題点を指摘され,研究の方向性を世界規模のミクロレベルのデータ収集から,特定地域(ミャンマー)を対象としたマンパワーを使ったミクロレベルの収集に軌道修正している。したがって,それによって生じた差額分は人件費(あるいはそのための研究環境整備)に支出する予定であったが,先述の通り,十分な人員を確保することが難しく,次年度使用額が生じている。本年度は,新型コロナウイルスの影響がどこまで継続するかに依存する部分も多いが,人員確保(そのための環境整備)に務め,研究計画を遂行したい。
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