2022 Fiscal Year Research-status Report
自然災害と武力紛争:武力紛争下における自然災害の発生とその実証分析
Project/Area Number |
18KT0009
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
冨永 靖敬 法政大学, 経済学部, 准教授 (40779188)
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Project Period (FY) |
2018-07-18 – 2024-03-31
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Keywords | 国内武力紛争 / 自然災害 / 国際安全保障 / 計量政治 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,武力紛争化における自然災害の発生が武力紛争の帰結に如何なる影響を及ぼし得るのか,グローバルな武力紛争,自然災害のデータを用いて実証することを目的とする。特に,複数の事例の調査から,災害に直面する武装組織への影響が必ずしも一定ではないことに着目し,どのような組織属性が自然災害という外生的なショックに対する頑強性の違いを生むのかを説明しようと試みる。
過年度実績報告書で報告している通り,本研究では,全世界を対象としたミクロレベルのデータの検証は困難となった。そのため十以上の反政府武装組織を国内に抱え,また自然災害が頻繁に発生する地域でもあるミャンマーを事例として分析を行う方向に転換した。当該研究は依然として継続中であるものの,本年度は新たな視点の研究も開始した。
上記で説明している通り,本研究では,災害に直面する武装組織が一様に影響を受けているわけではない点に着目し,組織属性と災害の影響の分析を試みていた。一方で,様々な災害事例を分析する中で,組織属性だけでなく,災害規模の影響に着目するようになった。つまり,既存研究がリニア(線型)な災害の影響を想定してきたのに対し,必ずしも災害規模の悪化が紛争の熾烈化を誘うわけではないことを検討するに至った。特に,災害規模が甚大な場合には,武装組織も深刻なダメージを受けており,武装闘争の停滞,また和平交渉を通じた紛争の終結,あるいは停戦を試みる事例もあり,災害が及ぼす影響は規模に応じて変化するとの分析を開始した。上記の点を明らかにするため,本研究では,災害と武力紛争について明らかにした複数の既存研究をサーベイした上で,回帰モデルに災害変数の二乗項を入れて研究結果を再現することで上記の仮説の検証を試みている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度から続くコロナ禍の影響,また研究代表者,共同研究者に発生したライフイベントによって,本課題に対する十分な時間の確保が行えていない。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は過年度から行なっているミャンマーの事例分析に加え,本年度から開始した災害と武力紛争の非線形の影響の分析を逐次行う。特に,後者については既にほとんどの分析を終えているため,次年度は学術誌への掲載を目指す。
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Causes of Carryover |
過年度からの引き続きの理由とはなるが,当初本研究では,GDELTというデータベースを用いた災害情報の抽出を行う予定であり,そのためのサーバ利用料やソフトウェア利用料を算出していた。しかし,GDELTに関する法的問題により,その使用を断念し,研究対象をグローバルレベルから特定の地域を対象としたミク ロレベルの分析へと計画を変更した。したがって,それによって生じた差額分は人件費に(あるいはそのための研究環境整備)支出する予定であったが,その使用には至っていない。また,コロナ禍の影響により,毎年度想定していた国際学会での研究発表の機会がなくなったため,それに掛かる費用も未使用分となっている。本年度も研究代表者に発生したライフイベントの発生により海外での学会活動を行える見込みは少なく,渡航費,学会参加費などへの支出は多くはないと考えている。現時点までに必要な備品やデータなどはあるため,あくまで研究の遂行を目的とし,不必要な研究費の消化は行わず,残高が発生した場合には機構に返還する。
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