2019 Fiscal Year Research-status Report
コンビナート災害に端を発する大都市複合災害の包括的シナリオ策定と総合防災減災戦略
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18KT0012
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
三宅 淳巳 横浜国立大学, 先端科学高等研究院, 教授 (60174140)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊里 友一朗 横浜国立大学, 大学院環境情報研究院, 助教 (90794016)
塩田 謙人 横浜国立大学, 先端科学高等研究院, 特任教員(助教) (30827837)
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Project Period (FY) |
2018-07-18 – 2021-03-31
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Keywords | コンビナート災害 / リスクマネジメント / クライシスマネジメント / 複合災害 / 防災減災 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,コンビナートクライシスを打破するための現状分析,包括的シナリオ想定とそれに基づく被害想定,リスク/クライシスマネジメント手法の構築を行い,産官公学連携による総合防災減災戦略の社会実装を目的として以下の成果の創出を目指すことである。 2019年度は,2018年度に構築した①具体的な被害想定,リスク/クライシスマネジメントフレームワークとリスクアセスメント手法に従い,災害シナリオ想定とリスクアセスメントに着手した。特に,災害の発生から収束に至る一般化シナリオと呼ぶべきマスターロジックツリーを構築し,災害事例を用いて検証した。さらに社会の機能および成立要件の抽出を試みた。これとマスターロジックツリーシナリオとを比較することで,具体的な問題点を抽出することができると考えられる。今年度はさらに洪水・高潮に関して、危険物貯蔵所や高圧ガス貯蔵所の位置とその想定浸水深さ,化学物質漏洩するリスクを見積もる技術開発を行った。これら一般化シナリオの検討と共に,特殊事例に関する検討も進めている。特殊事例はその発生頻度は低いと予想されるが,想定・対策の盲点となる可能性があるため,その解析も同様に重要である。今年度実施した特殊事例は,コンビナート地区に大量に保管している重合性モノマーが,自然災害による冷却システム喪失に伴い,緩やかな反応から暴走し,それに伴い有害性ガスを放出するシナリオである。これを熱分析および計算化学手法を用いた検討により,その事故進展シナリオを洗い出し,安全対策に対する考察を行った。 次年度は,コンビナート地区に対するアセスメントをさらに推し進める予定であり,その方法論をガイドラインとして取りまとめる予定である。災害の発生から収束に至る一般化シナリオと呼ぶべきマスターロジックツリーを構築できた。これは来年度以降もブラッシュアップ予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は,おおむね順調に進捗していると考える。昨年度構築したコンビナート地区において望まれるフィジカルリスクアセスメントに関するフレームワーク像を基に具体的なアセスメントを実施した。その過程で,課題として社会の機能および成立要件の抽出が必要であることがわかった。それは,コンビナートの防災・減災戦略を立案する上で,社会およびそれを支える社会インフラの機能要件やその成立要件を整理しなくては,実効性の高い戦略立案が不可能であることが明らかになったためである。これに対して,ISO31000規格等のマネジメント論に則り,これを整理することとした。そのため,当初今年度に実施予定であったフィジカルリスクに関する数値シミュレーション等が先送りになり,予算の繰り越しを行った。それ以外については,概ね計画通りに進捗した。コンビナート地区災害の特殊事例として,コンビナート地区に大量に保管している重合性モノマーが,自然災害による冷却システム喪失に伴い,反応暴走するシナリオの解析を行い,顕著な成果を得た。分子論的に反応暴走メカニズムを解明し,それを用いてシナリオ進展・分岐条件を整理し,各分岐点における安全対策を立案した。本成果は速やかに英文論文化し,国際学術誌より1報を公開した。 研究の過程で,当初想定していなかった社会要件の検討を行った関係で,予定していた数値シミュレーションの実施が後ろ倒しになったが,代わりに研究自体は深化されたと判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
京浜川崎地区に存在するコンビナートを題材に,リスクアセスメントフレームワークを適用し,具体的なアセスメントを行い,災害シナリオの抽出、被害想定を行う。その結果を基に必要となるクライシスマネジメントに対する必要要件を整理する。 具体的には,大規模地震や洪水・高潮に関する浸水と,危険物貯蔵所や高圧ガス貯蔵所の位置から定量的なリスクを算出する手法を開発する。その上で、火災爆発に関する影響度シミュレーションを実施することで,地震・津波の被害箇所からさらに被害が拡大するシナリオの描像とその被害想定も行う。被害想定と2019年度に構築したマスターロジックツリーおよび社会の成立要件を照らし合わせて,危機対応策について,いくつかの対応オプションをプランニングし,それぞれの効果を検討する。また災害事例を用いてこれの精度も検証する。 上記検討結果と横浜国立大学リスク共生社会創造センターが策定した先端科学技術に関する社会総合リスクアセスメントガイドラインを参考に,都市隣接型コンビナート地区のあるべき防災・減災戦略について考察し,取りまとめる。
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Causes of Carryover |
自然災害のために現地調査,ヒヤリングが当初予定の通りに実施できず,これら情報を入力とする数値計算に支障をきたし,計算の実施が予定通りに進まなかった。また,研究の過程で,当初想定していなかった社会要件の検討を行った関係で,予定していた数値シミュレーションの実施が後ろ倒しになったが,代わりに研究自体は深化されたと判断する。
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