2019 Fiscal Year Research-status Report
認知症患者間の共在性―オラリティによる認知症ケアの向上を目指して
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18KT0028
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
石川 智子 (伊藤智子) 筑波大学, 医学医療系, 助教 (70709683)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田宮 菜奈子 筑波大学, 医学医療系, 教授 (20236748)
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Project Period (FY) |
2019-03-01 – 2022-03-31
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Keywords | オラリティ / 認知症 / 共在性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、認知症の非言語的コミュニケーションの理解にオラリティの概念を当てはめるにあたりオラリティについての文献検討を行い、また臨床での観察計画をブラッシュアップし所属組織の倫理審査の承認を得た。文献検討の結果、オラリティ(話し言葉、音声言語)はリテラシー(書き言葉、文字言語)との対比を中心に議論がされてきたが、近年、オラリティがリテラシーを包含するような関係性にも言及されている。その中で、音声言語にしか含まれない要素(情報)や特徴があると指摘され、それは複数の語学研究者から「対人的関係」であったり「場」であったりと表現されている。こうした文献検討の結果から、本研究課題の「認知症患者間の共在性」とは「文字言語に変えられない音声言語の情報」によって伝達、共有された「場」であり、文字言語による影響を除外することでみえてくる状況であることが整理できた。その状況を捉えるためには、認知症患者間の会話を記録し、その会話に文字言語に置き換えられない言語を見出して文字言語による情報の伝達が行われていないことを確認することが必要である。また、文字言語にならない情報を捉えるべく、マルチメディアチャネルで観察に臨む必要があることも示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
認知症高齢者を研究対象としており、インフォームドコンセントの方法をよく検討する必要があり、倫理審査に時間を要した。また観察・分析ポイントを整理するため、オラリティとうい概念について改めて文献検討した。文献検討から見いだされたポイントを研究に活かしていく。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度はできるだけフィールドでの活動を増やし、研究対象者のリクルートを急ぐ。同意の得られた対象から随時、観察を始め、分析から再度の観察までのサイクルを早めていく。
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Causes of Carryover |
倫理審査および概念整理に時間を要したことから、フィールドでの研究活動がほとんどできなかった。そのため、経費を計画的に使用できず残額が生じた。今年度は人員を雇用し、研究のスムーズな遂行を図っていく。また観察に用いる撮影機材等を整備し、観察データの収集を進めていく。
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