2020 Fiscal Year Research-status Report
認知症患者間の共在性―オラリティによる認知症ケアの向上を目指して
Project/Area Number |
18KT0028
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
石川 智子 (伊藤智子) 筑波大学, 医学医療系, 助教 (70709683)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田宮 菜奈子 筑波大学, 医学医療系, 教授 (20236748)
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Project Period (FY) |
2019-03-01 – 2022-03-31
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Keywords | 認知症ケア / 非言語的コミュニケーション / オラリティ / 共在性 |
Outline of Annual Research Achievements |
認知症患者間における共在性は、患者同士で会話の内容が噛み合わなくても穏やかな表情でやり取りが続いていく現象として観察される。具体的には、「お前さんはどっから来たんだ」と問いかけても「今朝は寒かっぺな」と返答があり、会話の食い違いを指摘することなく修正されることなく、双方は笑顔で噛み合わない会話を続けていく。この現象では、認知症患者間の対面関係において、互いを正確に認識するのではなく、互いの存在をただ肯定してくれているという身体的な相互作用を介した雰囲気の共有がなされていると想定され、そこには、オラリティによる共在性があると考えられる。このように本研究では、「認知症患者間の共在性」をテーマとして、認知症患者同士ではたらくオラリティの観察に主眼を置いている。そのため、認知症高齢者ケアを専門とする施設での参加型観察が欠かせない方法であるが、2020年度はCOVID-19の影響により、感染対策上、研究目的として現場に立ち入ることが難しく、研究の進捗は遅れざるを得なかった。そこで、そうした空白期間でもできるだけ成果を得るべく、認知症におけるオラリティケアをテーマに文献検索や事例検索を行った。その結果、我が国においては、厚生労働省管轄の認知症介護研究・研修大府センターの研究事業による成果がめざましく、認知症高齢者における非言語的コミュニケーションにおける実態として、表情認知能力に関しては加齢による影響が少ない、あるいは音声センテンスの意味認知パフォーマンスの加齢による低下などの結果が見いだされていた。認知症ケア領域における非言語的コミュニケーションに関する検証や考察は多くはないものの、介護者のユマニチュード的な介入や被介護者の表情といった非言語的要素を量的に可視化することを目的とした一連の研究報告がみられるなど、本研究に対し有用な知見が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究では、「認知症患者間の共在性」をテーマとして、認知症患者同士ではたらくオラリティの観察に主眼を置いており、認知症高齢者ケアを専門とする施設での参加型観察が欠かせない方法である。しかしながら、今般のCOVID-19の影響により、感染対策上、研究目的による高齢者施設への立ち入りは極めて困難であった。またそうした状況から、入所者家族への研究についての説明が憚られ、対象のリクルートにおいても困難を極めている。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度については、ワクチン接種による感染対策上の進歩はあるものの、やはり慎重を期す状況であることが予想される。そのため、高齢者施設職員を主体とした研究実施方法に切り替える必要があり、2020年度はそのための調整に時間を費やした。そうした準備を基に、2021年度においては、少しでも現場での結果を得られるように進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
今般のCOVID-19の影響により、感染対策上、研究目的による高齢者施設への立ち入りは極めて困難であった。そのため、データ収集やデータ分析に必要な支出が滞り、次年度使用額が生じた。次年度においては、高齢者施設職員の主体的な作業によってデータ収集を計画しており、そのための経費支出を予定している。
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