2020 Fiscal Year Research-status Report
地域社会の共在的記録に基づくコミュニケーションと記憶の活性化
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18KT0035
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Research Institution | National Institute for Japanese Language and Linguistics |
Principal Investigator |
小磯 花絵 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所, 音声言語研究領域, 教授 (30312200)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大武 美保子 国立研究開発法人理化学研究所, 革新知能統合研究センター, チームリーダー (10361544)
春木 良且 フェリス女学院大学, 国際交流学部, 教授 (80277954) [Withdrawn]
田中 弥生 神奈川大学, 国際日本学部, 非常勤講師 (90462811)
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Project Period (FY) |
2018-07-18 – 2022-03-31
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Keywords | 共想法によるコミュニケーション / 認知機能 / 映像アーカイブ |
Outline of Annual Research Achievements |
新型コロナウイルスの影響もあり、2020年度は計画を変更して次の通り実施した。 共想法:これまで、認知症予防に有効とされる認知活動(体験記憶、注意分割、計画)を支援するための会話手法である共想法に基づき、居住地域を中心とするテーマで「お江戸共想法」を対面の集合形式で行ってきた。しかし2020年度は新型コロナウイルスの影響で対面での開催が困難となったことから、試作開発中であったスマートフォン・タブレットアプリを用いた遠隔会話支援システムに切り換え、同じ写真を見ながら時間を決めて会話をする共想法を実施し、データを収集した。これと平行して、2019年度までに収集した会話データを整備して分析を行った。発話における単語数に対する単語種類数の増え方の度合いにスケール則が見られ、認知機能が高いほど、単語数が増えた時に単語種類数が増え続ける傾向にあることなどを明らかにした。また、共想法談話を脱文脈化指数の観点から分析した。脱文脈化は子供の言語発達の分野で提案された指標であるが、高齢者の言語特徴量を抽出する上で有効であることを確認し、脱文脈化の度合いがテーマや人毎に異なり、テーマや人の特徴をとらえることができることを明らかにした。 地域映像の保存:新型コロナウイルスの影響により地方自治体に出向いた活動が困難であったことから、関東圏を中心にオンライン中心で活動した。2020年度は主に、茨城県政ニュース映画の映像を元に、住民の記憶と個人写真などの記録を収集し、地域アーカイブズを構築することを目指した活動を行った。また2020年9月に、茨城県政ニュース映画を用い、地域の高齢者3名に映像を観てもらいながらインタビューを行うワークショップを、利根町公民館で開催した。なお同イベントは、利根町の協力のもと感染状況に配慮し広い会場にて実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は高齢者を主対象とするものであるが、新型コロナウイルスの影響で計画を大きく変更せざるをえなかった。これまで対面形式で開催してきた共想法はすべてオンラインに切り換え、規模を縮小して開催することとなった。また今年度から映像コンテンツを有する自治体の協力を得て共想法を拡張する方針で2019年度から準備を進めてきたが、この計画は完全に断念せざるをえなかった。かわりに地域アーカイブズを構築する活動を進めた。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画では、自治体が有する映像コンテンツを素材に共想法を行い、それをアーカイブ化する予定であった。しかし、現時点での新型コロナウイルス感染拡大の状況、対象が高齢者であること、共想法開催のためには複数のメンバーが出張せねばならないことなどを考えると、新たなフィールドで共想法を開催することは難しい。そこで、共想法は2020年度と同様、「お江戸共想法」を当面はオンラインで開催し、状況により対面開催に切り替えると同時に、これまで収録した活動をアーカイブ・コーパスとして整備して公開の準備を進める。一方、自治体が有する映像コンテンツについては、研究期間内で共想法の素材として活用し定着させることは難しいと判断した。そこで、映像を元に住民の記憶と個人写真などの記録を収集して地域アーカイブズを構築するという、2020年度の取り組みを継続する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響で、調査・収録活動が停滞したことにより、予算の執行が滞った。本研究は高齢者を対象としているため、感染拡大がおさまるまで、対面での収録や調査活動は難しい。そのため2021年度は、収集・調査したものを対象とするアーカイブ・コーパス化を積極的に進める。
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Research Products
(2 results)