2019 Fiscal Year Research-status Report
宗教言語の共在性と創造性:古代メソポタミアの祈祷と中世日本の祭文の比較研究
Project/Area Number |
18KT0078
|
Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
細田 あや子 新潟大学, 人文社会科学系, 教授 (00323949)
|
Project Period (FY) |
2018-07-18 – 2022-03-31
|
Keywords | メソポタミア / アーシプ / 儀礼 / 唱えごと / 災因論 / 媒介するもの |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に続き、古代メソポタミアの宗教儀礼のなかで、アーシプという職能者が行う儀礼について考察を進めた。その際、「アーシプの要覧」とよばれる文書に着目した。この文書はアーシプの活動や職種、職域、また彼らの特徴を考察する際きわめて重要な文書である。ここには、アーシプが身につけるべき事柄が列挙されているが、数多くの唱えごとも挙げられている(KAR 44ほか)。 メソポタミアでは、病気を引き起こす要因にはさまざまなものがあるととらえられていた。多種類の悪霊、キシュプー、供養を受けていない死霊などである。そのため体調不良や病気を治すためには、悪霊を追放し遠ざけることが必要とされた。そのような儀礼を行っていたのが、アーシプである。 アーシプが行ったことは多岐にわたっており、病気治療の儀礼行為や、そこで唱えられる唱えごとも多様である。2019年度は、アーシプの儀礼のなかから、ラマシュトゥやウドゥグ/ウトッゥクー悪霊に対する唱えごと、つまりこれら悪霊による病気や体の不調を治すための儀礼について考察した。ウドゥグ/ウトッゥクー悪霊に対する儀礼では、この悪霊のほか、アルー悪霊、ガルー悪霊、ラマシュトゥといったさまざまな悪霊を払うための唱えごとと所作が行われる。その唱えごとの解読にあたり、ファルケンシュタインが分類した唱えごとのタイプなどについても考察を加えた。とくに「マルドゥク・エア型」とよばれるタイプの特徴を分析した。この唱えごとにおいては、エアに従って行動するマルドゥクの役割をアーシプが引き受けることとなるため、さまざまな所作をとおし悪霊を追い払うアーシプは、知恵の神エアの媒介者となる。エアと病人を媒介し、病気を癒すことが強調されている。唱えごとと儀礼の行為についての文書の読解をとおし、アーシプの儀礼の特徴が明らかとなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画どおり、メソポタミアのアーシプによる儀礼における唱えごとの読解が進んでいるため。
|
Strategy for Future Research Activity |
引き続きメソポタミアのアーシプの儀礼文書の読解を進める。日本をはじめとするアジアの儀礼との関連についても比較考察を行う。 さらに儀礼で用いられる道具についてもその行為主体性について考察する。
|
Causes of Carryover |
国内の出張をコロナウイルス感染拡大防止ゆえに取りやめたため。この分は次年度の国内旅費にあてる予定である。
|