2021 Fiscal Year Research-status Report
宗教言語の共在性と創造性:古代メソポタミアの祈祷と中世日本の祭文の比較研究
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18KT0078
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
細田 あや子 新潟大学, 人文社会科学系, 教授 (00323949)
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Project Period (FY) |
2018-07-18 – 2023-03-31
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Keywords | アーシプ / 唱えごと / ナンブルビ / 護符 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に続き、古代メソポタミアの宗教的職能者アーシプに注目しながら、彼らが書き記し伝承させた文書の解読を行った。とくに儀礼文書のなかから「ナンブルビ」儀礼を考察した。ナンブルビ儀礼は、何かの異変を目にしたり何かの事柄を被ったりした人物が、それはこれから起こる悪や災いの前触れ、予兆であるととらえられる場合、その予兆やしるしからもたらされる悪や災禍を未然に避けるために行われる儀礼である。個人やその家族にふりかかる災いの予兆や、国家の命運を左右する予兆もあるが、アーシプたちはそれらを回避するための儀礼を行っていた。多様な儀礼で唱えられるべき文言が定型化され、アーシプは言葉による術を駆使していたことが明らかとなった。さらにアーシプは、悪や不浄を移動させ、ある人間の将来を神々との関係のなかで変更できる力を有していると言える。彼らには予知能力があったと考えられる。 また、日本のいざなぎ流の祭文についても、研究書を読み進めた。「すその祭文」が儀礼で重要であるが、「すそ」とは広い意味では不浄や汚れをあらわす。そのため、儀礼では「すそ」を除去し、儀礼の場を清浄な空間にすることが重要である。このように悪や不浄を祓うことは、唱えごとや祭文に共通することも明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナウイルス感染拡大防止のための外出制限により、文献資料調査や実地調査ができなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
中世日本の祭文の特徴を調べ、古代メソポタミアのアーシプの唱えごとと比較検討する。また、呪文が書かれた木簡や形代、人形と、護符などがどのように用いられていたのか、メソポタミアと中世日本の儀礼の比較考察を行う。
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Causes of Carryover |
コロナウイルス感染拡大防止のための外出制限により、国内、国外の出張がすべてキャンセルされたため。 2022年度においても感染状況が今後どうなるか不明であるが、旅費や物品費、また謝金などの支出を計画している。
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