2019 Fiscal Year Research-status Report
Caregiver-infant joint action in the emergence of daily skills
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18KT0079
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
野中 哲士 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 准教授 (20520133)
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Project Period (FY) |
2018-07-18 – 2022-03-31
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Keywords | アフォーダンス / 身体技法 / 習慣 / 共同注意 / 促進行為場 / 発達 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,まだ言葉を使う前の乳児が日常生活技能を獲得する周囲で生起する乳児―養育者間の共同行為(joint action)と,これらの共同行為の乳児の発達にともなう推移を縦断的に記述することを通して,状況や発達を反映して複雑にゆらぐ乳児の行為に寄り添う養育者の行為が乳児の動作や場面の状況のどのような特徴に呼応して調整されているのかを実証的に明らかにすることを目的としている.本年度は前年度までに蓄積された12組の乳幼児と養育者の10ヶ月におよぶ昼食場面の膨大なビデオデータをもとにした研究発表および論文、書籍の公刊を行った。2019年7月にオランダ、フローニンゲン大学で行われた国際学会International Conference on Perception and Action 2019の学会シンポジウム“Nested Affordances”において“Development of skills to use specific affordances: Changes in infant-mother dyads around transitions in infant feeding”と題する口頭発表を行った。また、University of MinnesotaのStoffregen教授との査読付き国際共著論文を国際学術雑誌Developmental Psychobiologyに投稿し採択された。ほかに、日常行為を周囲で起こっている出来事から捉えるアプローチに関する単著論文“Locating the inexhaustible: Material, medium, and ambient information”を国際学術雑誌Frontiers in Psychologyに投稿し、採択された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度行った分析では、保育園で幼児がはじめてスプーンを用いて独力で食べる行為が観察された週(平均月齢17.88±1.09)の昼食場面を抜き出し、(1)昼食場面で見られた養育者の介助行為(食卓上の皿・食物の配置を調整する、幼児の体に触れて動作をガイドする、声をかける)と、(2)その直後の乳児のスプーン使用行為(スプーンで食物に触れる、スプーンで遊ぶ)、(3)養育者に対する乳児の視線(顔を見る、手元を見る)という3つの関係を検討した。その結果、いくつかの相互に関連する結果が得られた。(a)幼児が食事中に養育者に向ける視線の多くは養育者の手元に対するものであり、乳児が養育者の顔を見る場面はごくまれであった。(b)幼児は養育者が食物や食器を扱っているときに、そうでない時よりも多く養育者の手元を見ていた。(c)養育者が食卓上の皿・食物の配置を調整しているときやその直後に、幼児は食物にスプーンで触れることが多かった。(d)幼児は養育者の手元を見た直後に、それ以外の時間よりも多く食物にスプーンで触れることが多かった。(e)まれに見られた幼児が養育者の顔に視線を向ける場面は、自分がスプーンで食物を口に運んだ直後、もしくはスプーンで遊んだ直後に生起することが、他の時よりも有意に多かった。幼児は発達途上にあるスプーン使用行為をガイドする上で、介助する養育者の手元と顔に異なるタイミングで視線を向けていることが初めて明らかになった。これらの事実について、国際学術雑誌Developmental Psychobiologyに採択された国際共著査読付き論文において報告した。また、周囲との関わりから行為の発達を捉える手法について、分担執筆をした書籍『質的研究法マッピング』(新曜社)の中で概説するなど、学会発表、論文、書籍で成果を公開することができ、研究はおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、現在蓄積しつつある乳児の日常行為獲得場面のビデオデータをもとに、乳児の行為が変化していく中で見られる養育者と乳児の共同行為において,乳児の挙動特性と養育者による調整の関係を検討し,状況に応じて毎回変動する乳児の行為と,乳児の行動に柔軟に同調する養育者の行為の呼応関係を縦断的に検討し,乳児の日常行為獲得を支援するプロセスに見られる共同行為が依拠する高次の変数を明らかにする.続いてさらに、モバイルの視線計測装置を用いることによって、自然な日常場面における共同注意の形成、維持のダイナミクス特性を検討する。これらの定量的データをもとに、状況や発達を反映して複雑にゆらぐ他者の些細なふるまいの変化に共鳴し,複雑な実世界環境の中で,他者の行為とやわらかく結びつくことを可能にしている情報の具体像を明らかにする。
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Research Products
(8 results)
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[Book] Perception as Information Detection: Reflections on Gibson’s Ecological Approach to Visual Perception2019
Author(s)
Jeffrey B. Wagman, Julia J. C. Blau, Anthony Chemero, Tetsushi Nonaka, Christopher C. Pagano, Claudia Carello, Michael T. Turvey, William M. Mace, Robert Shaw, Audrey L. H. van der Meer, William H. Warren, Harry Heft, Karen E. Adolph, Michael A. Riley, Thomas A. Stoffregen
Total Pages
338
Publisher
Routledge
ISBN
9780367312961
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