2019 Fiscal Year Research-status Report
Development of the micro-optical devises for monitoring plant activities at the tissue and cellular levels
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18KT0088
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
久保 稔 熊本大学, 大学院先端科学研究部(理), 特任講師 (30342778)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
春田 牧人 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 助教 (40733663)
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Project Period (FY) |
2018-07-18 – 2021-03-31
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Keywords | 微小光学デバイス / 非侵襲 / リアルタイムイメージング / 植物生理応答モニタリング / 組織・細胞レベル / 環境応答 / ICT |
Outline of Annual Research Achievements |
少子高齢化社会が進んだ現在の日本では、農業を営む担い手の不足は喫緊に解決すべき問題である。しかし、圃場での作物栽培は日々変化する自然環境に適切に対応しなければならず、これには経験に基づく知識が必要であり、重労働であることともに、新規農業従事者の参入の障壁の一つとなっている。近年、これらの状況をサポートするために、様々な作物栽培情報を活用することが提案されている。これまでに生育に大きく影響する水、栄養、日照、温度などの環境条件は、ICTを活用した情報収集が行われ、活用され始めているが、作物の成長具合や、病虫害の有無などの生体情報については作物の個体レベルでの画像を利用したものがほとんどであった。そのため、環境変化に応答した植物の初期の微細な変化を取得して迅速に対応することは困難であった。そこで本研究では、植物の生育条件をリアルタイムで、細胞・組織レベルで取得することを目的とした植物モニタリングデバイスの開発を行った。 昨年度までに試作した植物生理活性モニタリングデバイスについて、実証実験を行った。植物の葉にデバイスを固定し、HD画像を毎分取得するタイムラプス撮影に成功した。撮影期間での撮像のズレ等は観測されなかった。しかし、デバイスを固定した部分において、光源部におけるLED基盤の発熱の影響と思われる若干の変色が見られた。そこで、ヒートシンクを搭載したLED光源を開発し、それを用いて撮影を行った結果、前者で見られた葉の変色は観察されなくなった。また、デバイスに搭載したWi-Fiを介して、植物生理活性モニタリングデバイスの操作、並びに、長時間の取得画像のリアルタイムモニタリングが遠隔で可能であることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和1年度は以下の研究を中心に行った。 (2)植物の生理活性モニタリングデバイスの動作検証 昨年度開発した植物生理活性モニタリングデバイスにおいて、トラディスカンティアの葉のタイムラプス撮影を行った。植物の葉の表面には、気孔と呼ばれる穴があり、この開閉により、蒸散による水分の排出および根から水の吸い上げ、光合成に必要な二酸化炭素の取り込みを調整している。よって、気孔の開閉をモニタリングすることは、植物体内の水の移動、光合成能とリンクしたリアルタイムな生体活動を取得することになると考えられる。葉表皮に存在する気孔が明瞭に観察され、HD画像を毎分取得するタイムラプス撮影に成功した。この画像を解析したところ、撮影期間において撮像のズレなどは観察されなかった。また、一部の気孔について、開閉する様子が観察された。これらのことから、この植物生理活性モニタリングデバイスが、気孔の開閉のモニタリングに有効であることが示唆された。しかし、光源部におけるLED基盤の発熱の影響で、資料の葉に若干の変色等、影響が見られた。そこで、ヒートシンクを搭載したLED光源を開発し、それを用いて撮影を行った結果、前者で見られた葉の変色は観察されなくなった。また、デバイスに搭載したWi-Fiを介して、植物生理活性モニタリングデバイスの開始終了、撮像条件の変更、が行えることを確認した。加えて、ラップトップPCやスマートフォンで、取得画像のリアルタイムモニタリングが遠隔で行えることも確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
R1年度で検証した試作型の植物生理応答モニタリングデバイスをもとに、量産化が可能なデバイスの基盤設計を行う。それにより作成した汎用型の植物生理活性モニタリングデバイスを用いて、植物における設置部位や使用条件を決定する。これまで用いてきたトラディスカンティアに加え、実験植物のシロイヌナズナや、様々な栽培作物を用いて、気孔の画像情報の取得を試みる。さらに、データ取得のインターバルやデータ取得時間など、それぞれの植物に適したモニタリング条件を検討する。また、得られたタイムラプスデータをもとに気孔の開閉状態を判別するアルゴリズムおよびプログラムの選定・開発に着手する。さらに気孔の開閉状態と植物の生育状態を関連付けるために、次世代シーケンシングを用いた網羅的遺伝子発現解析を行い、気孔の開閉状態と相関の高い遺伝子群を探索する。
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Causes of Carryover |
R1年度から熊本大学先端科学研究部(理)分子農学寄附研究分野に異動し、奈良先端科学技術大学院大学から研究の遂行に必要な実験機器、サンプルの移設を行なった。着任後に、新しい環境下での電源・空調等の工事発注を行ったが、これが完了するまでに時間を要した。その後、実験植物の育成をはじめ、生育状況が安定する数ヶ月の間、植物生理応答モニタリングデバイスの開発を進めるとともに、実験に用いる植物の栽培状況の条件検討を行った。その間、分担者によるデバイスの改良、Wi-FIを利用した遠隔操作・リアルタイムモニタリングの実証試験を行なった。この動作検証実験には1種の植物のみ用いたため、R1年度に計上した植物育成関連試薬・器具類の購入に係る消耗品費を次年度に繰り越すことにした。繰り越した経費は、植物生理応答モニタリングデバイスを用いる様々な植物種、およびそれらの育成条件の検討に使用予定である。また、植物生育の環境情報の取得に必要な計測機器類、気孔の開閉状態と植物の生育状態を関連付けるために、次世代シーケンシングを用いた網羅的遺伝子発現解析にかかる外部委託費にも使用予定である。
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Research Products
(2 results)