2019 Fiscal Year Research-status Report
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18KT0091
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
宮内 樹代史 高知大学, 教育研究部自然科学系農学部門, 准教授 (80253342)
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Project Period (FY) |
2018-07-18 – 2022-03-31
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Keywords | 農資源 / 石垣 / 蓄熱 / 棚田 / 耕作放棄地 |
Outline of Annual Research Achievements |
耕作放棄地となった棚田を次世代の農資源として活用する一手法として、棚田石垣を活用した園芸ハウス(石垣蓄熱ハウス)を提案した。南面のみを採光部とし北面に位置する石垣部分を蓄熱媒体としたこのハウスは、わずかな投入エネルギーでの作物栽培が実証されている。本年度は石垣ハウスの環境計測を継続するとともに、構造上の課題を解決する手法を検討し、ハウスの普及に努めた。 石垣蓄熱ハウスの環境特性については、立地条件の異なるハウスでの環境計測の結果、標高による差異はあるが、石垣による蓄・放熱効果が確認された。ハウス内気温は外気温より安定的に高く、石垣温度は安定的に推移し、ハウス被覆面に対して石垣の割合が多いほど保温性に優れていることが示唆された。環境計測に基づいた通常パイプハウスと比較した試算では、30%以上の燃油削減効果となった。 また、新たな品目として検討していたマンゴーについては、一定量の収穫を得ることができ、石垣ハウスでの無加温栽培が実証された。今後は環境データと生育・収量データの関連付けを行い、生産体系の確立化を図る。 一方、石垣ハウスの構造上の課題として、被覆資材とハウス骨材(製材)の接合部に擦れが生じ、漏水の原因となることが判明した。これについては、ビニールを接合する金具を新たに開発し、金具を受ける部分の木材を加工することで資材の擦れを回避し、被覆資材の耐久性向上を図った。新設の石垣ハウスにはこの構造が用いられている。 以上のことから、高知県仁淀川町において石垣ハウスの普及は15棟以上に及び、今後も増加する予定である。石垣ハウスの栽培者間の協議会も設立され、中山間地域の新たな生産形態として期待されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
環境計測を中心に、予定していた項目は完了することができ、ハウスの性能については概ね実証することができた。これを踏まえ、普及に際しての新たな課題が浮き彫りとなったが、次年度以降の課題として解決を図っていく。 また、コロナ対応のためデータ回収と機器メンテナンス時期を逸し、2020年1月以降の環境計測データは喪失した。中山間地域に点在するハウスにおける環境情報の収集方法についても今後の課題となった。
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Strategy for Future Research Activity |
主要品目であるトマトの生産手法はほぼ確立したが、生産物の出荷体制の強化が求められている。中山間地域での生産量増加のために、新たなネットワーク構築を視野に入れ、経営的な視点での評価も検討する。 一方で、新たな品目としてはマンゴーへの期待が大きい。石垣ハウスでの栽培方法確立のために、環境計測と生育・収量調査を継続する。しかし、石垣ハウスの立地条件によっては電力供給が不可能な地点もあり、データ収集や栽培管理上の制限があるため、これらの対応を検討していく。 また、環境データの一元化という点では、各ハウスのデータをモニタリングし、共有する手法についても検討を行う。
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Causes of Carryover |
実験圃場での計測・データ回収時の消耗品等で誤差が発生し未使用額が出たが、次年度分と併せ物品費として速やかに使用する予定である。
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Research Products
(3 results)