2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19002012
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
坂野 仁 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 教授 (90262154)
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Keywords | 匂い受容 / 嗅覚受容体 / 嗅神経細胞 / 軸索投射 / 匂い地図 / 嗅覚情報処理 / 先天的忌避行動 / 学習行動 |
Research Abstract |
ヒトやマウスの嗅覚系において、匂い情報は嗅細胞軸索の投射スクリーンである大脳前方の嗅球に、糸球の発火パターンとして画像展開される。当グループでは、嗅球の領野特異的に糸球構造を除去した遺伝子改変マウスを作成し、匂い画像が脳によってどの様に読み取られるかについて研究を行った。具体的には、嗅上皮の特定の領域に一過的にジフテリア毒素を発現させ、対応する嗅球上の糸球群を除去した遺伝子改変マウスを作製した。このマウスの行動解析により、嗅球の背側ドメインは匂いの質の本能的識別に、腹側ドメインは匂いの違いを学習判断するのに必要である事が判明した。これまで嗅球は、嗅上皮で受容された嗅覚情報を画像として映し出すスクリーンと考えられ、匂い情報に基づく情動や行動の判断は脳の中枢で行われると考えられて来た。しかしながら我々の実験によって,匂い識別には、先天的な本能判断の為の神経回路と経験に基づく学習判断の神経回路が独立に作動し、異なるセンサーを用いて匂い情報の入力を受けている事が明らかになった。これらの成果は各方面から注目を集め、ネコを怖がらない変異マウスとして様々な国のメディアで広く報道された。当グループで進めている高等動物の嗅覚に関する研究は、感覚情報の統合と分配という脳の高次機能の原理を理解する為の手がかりを与えるものとして極めて重要であるのみならず、システムバイオロジーとしてこれから大きな進展が見込まれる。また、ヒトの嗅細胞は、極めて例外的に常時再生を繰り返す神経細胞であり、嗅覚系における神経再生因子や神経幹細胞の研究は再生医学にも大きな貢献をなす可能性がある。
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Research Products
(14 results)
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[Book] The Senses2007
Author(s)
Tsuboi, A. and Sakano, H.
Total Pages
8
Publisher
Regulation of expression of odorant receptor genes.