2008 Fiscal Year Annual Research Report
電荷・軌道秩序相のミクロな摂動がもたらす巨視的光応答
Project/Area Number |
19014003
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
石原 純夫 Tohoku University, 大学院・理学研究科, 准教授 (30292262)
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Keywords | 強相関電子系 / 物性理論 / 光物性 / 磁性 / 放射線、X線、粒子線 / 光誘起相転移 / 不純物効果 |
Research Abstract |
1) スピンと電荷が強く結合した系における光誘起現象 : マンガン酸化物に代表されるスピンと伝導電子が強く結合して系における光誘起現象について、理論的な解析を行った。ここでは有限クラスターにおける厳密対角化法と、非制限ハートリーフォック法を併用することで光誘起現象の全容を明らかにすることを目的とした。特に電荷とスピンのダイナミクスの相違について着目した。実時間シミュレーションを行い、各種の相関関数や励起スペクトルを解析することで以下のことが明らかになった。[1]系の時間発展は電子の運動で支配される短い時間スケールとスピン緩和で支配される長い時間スケールで特徴付けられる。[2]前者においては電荷とスピンのダイナミクスは強く相関している。後者の時間スケールでは強磁性相間が大きく発達する一方で、電荷は大きく変化しない。これら二つの特徴的な時間スケールと電荷・スピンダイナミクスの結果は、最近のマンガン酸化物におけるポンプ・プローブ実験の結果を説明するものである。 2) 軌道秩序系における不純物効果 : 軌道秩序系において軌道に自由度を有さない不純物を導入する、軌道希釈効果について解析を行った。特にスピンと軌道が強く結合する系の希釈効果について調べた。理論模型としてスピン・軌道模型を用い、これをモンテカルロ法とクラスター展開法を用いることでランダムに導入された軌道不純物に対する磁性の変化を調べた。この結果、不純物の無い場合に実現するA型反強磁性構造が、不純物の導入により強磁性構造へと変化することを見出した。これは軌道の希釈効果により、その不純物周囲の軌道擬スピンが修正を受け、その結果磁気相互作用が反強磁性なものから強磁性へと変化したことに起因する。これらの計算結果は、LaMnO_3に軌道自由度を持たないGaイオンを導入した系における、磁化測定や中性子散乱実験の結果に対して微視的な説明を与える。
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