2007 Fiscal Year Annual Research Report
空間反転対称性の無い超伝導における磁場誘起新秩序相の解明
Project/Area Number |
19014009
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
藤本 聡 Kyoto University, 大学院・理学研究科, 准教授 (10263063)
|
Keywords | 超伝導 / 磁性 / 強相関電子系 / 重い電子系 / 空間反転対称性 |
Research Abstract |
(1)空間反転対称性の破れた超伝導体Y2C3は最近、良質な試料が作成され空間反転対称性のない超伝導体の中では最も高い転移温度を有する。それとともにこの系では空間反転対称性の破れが比較的小さく、超伝導ギャップのエネルギースケールとスピン軌道相互作用のエネルギースケールが拮抗する可能性があり、それによる新しい物性の発現が理論的に期待される。このような観点から、我々は空間反転対称性の破れが小さい超伝導体の電磁気的性質について理論研究を行ってきた。その結果、等方的なs波超伝導体であってもゼーマン磁場と異方的なスピン軌道相互作用が絡み合うことによって、準粒子のエネルギーギャップが異方的になることが見いだされた。また、このような効果が磁場中の比熱等の実験で観測可能な物理量にいかなる影響を及ぼすかを詳細に調べ、実験で検証可能な幾つかの理論的予言を行った。 (2)空間反転対称性の破れた超伝導体CePt3Siでは、最近、良質単結晶の作成が進歩し、新たな実験データが蓄積されつつある。それによるとこの系の単結晶では一般的に、空間反転対称性の破れの向きが逆方向の双晶ドメインが形成されている可能性が高いことが示唆されている。このようなドメインが存在すると超伝導物性に著しい影響を及ぼすと考えられる。このような観点から我々は、ドメイン間のジョセフソン接合を考慮したモデルにもとづく超伝導状態の計算を行った。その結果、ドメイン上では、零エネルギー束縛状態が形成され、さらにドメイン上では通常の超伝導体のように磁束量子が整数でなく、任意の端数の値を取りえる特異な渦糸状態が実現されることが明らかになった。双晶界面における端数渦糸の存在は、磁束のダイナミックスに著しい影響を及ぼす。flux creepの観測等によって、この特異な渦糸状態が観測されることが議論された。
|
Research Products
(2 results)