2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19014013
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
川上 則雄 Kyoto University, 大学院・理学研究科, 教授 (10169683)
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Keywords | 遷移金属酸化物 / 軌道ゆらぎ / フラストレーション / モット転移 / 異常伝導 |
Research Abstract |
本年度は、多バンド構造およびフラストレーションを有するモット転移に関する研究を行った。 ◇拡張近藤格子模型における金属絶縁体転移 多軌道を持つ遷移金属酸化物における軌道依存型のモット転移と異常金属相を調べるため、拡張された近藤格子模型(伝導電子と局在電子間の相互作用を含む)を動的平均場理論を用いて調べた。モット絶縁体と近藤絶縁体間の転移点付近に異常な金属相が現れることが分かった。この金属相は反強磁性秩序を伴っており、通常見られる重い電子系とは性質が異なる。このような異常な性質は磁化の温度依存性に特徴的に現われる(磁化がいったんゼロになり再び現れる)ことを示した。 ◇フラストレート格子系のモット転移と磁気転移 フラストレーションの強い格子として3角格子ハバード模型を考え、有限温度モット転移を調べた。これまでのセル型動的平均場に加えて、スピン揺らぎをとりいれた拡張動的平均場近似、自己エネルギー汎関数法を用いて計算を行った。その結果、フラストレーションが緩和された系に現れるリエントラント的なモット転移を再現することができた。この結果は有機伝導体で観測されている結果をうまく説明する。 ◇軌道縮退系のモット転移 昨年度の量子モンテカルロ法を用いた軌道選択モット転移の研究を継続して行った。これまでの動的平均場理論では困難であった低温での計算が、改良された量子モンテカルロ法を援用することで可能となった。特に、反強磁性絶縁体、強磁性金属のほかに新たな磁気秩序相がクオーターフィリングに生じることを示した。
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