2007 Fiscal Year Annual Research Report
複合系新規ナノプロトニクス材料のメカノケミカル合成とプロトンダイナミックス
Project/Area Number |
19017009
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Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
松田 厚範 Toyohashi University of Technology, 工学部, 教授 (70295723)
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Keywords | ナノプロトニクス / メカノケミカル / プロトンダイナミックス / リンタングステン酸 / 硫酸水素セシウム / プロトンNMR / 複合体 / 有効媒質理論 |
Research Abstract |
メカニカルミリンダ(MM)法を用いて3価ポリアニオン構造を有するリンタングステン酸(WPA)と硫酸水素セシウム(CsHSO_4)を複合化すると、得られる複合体は、室温から160℃程度の広い温度範囲において高いプロトン導電率を示す。室温における^1H MAS NMR測定より、WPAの添加によって、CsHSO_4の水素結合ネットワーク構造が変化していることが示された。また、例えば100℃における導電率はWPA、CsHSO_4いずれも10^<-7>〜10^<-6>S/cmオーダーであり、単純にWPAとCsHSO_4単体の導電率を組み合わせるだけでは、CsHSO_4/WPA複合体の導電率の組成依存性を定量的に説明することはできない。そこで今回、^1H NMRのスピン-格子緩和時間(T_1)の温度変化より、ナノオーダーにおける複合体の無加湿プロトンダイナミックスを調べた。プロトンがあるサイトにとどまっている平均滞在時間(τH)を算出したところ、室温から140℃付近までCsHSO_4単体(低温相)よりもWPAを複合化した90CsHSO_4・10WPA(mol%)の方が3桁以上τHが短く、例えば100℃(無加湿)における値は、CsHSO_4単体が3.5×10^<-5>sであったのに対し、複合体の値は1.1×10^<-8>sとなった。この結果は、プロトンホッピングの律速過程とされるSO_4四面体の再配列速度が、WPAの添加により3,000倍以上に増大していることを示唆するものであった。室温における^1H MAS NMR測定より、WPAを加えることでWPAとCsHSO_4間に新たな水素結合が形成されることがわかっているが、この水素結合が無加湿におけるプロトンの運動性に深く関与していると考えられる。さらにWPA/CsHSO_4界面に高プロトン伝導相が存在するとして、有効媒質理論を基に導電率の組成依存性を計算し、界面層の厚みとその導電率を見積もることで、WPA添加による導電率増大のメカニズムについて検討を行った。その結果、界面相の導電率は50mS/cm(logσ=-1.3)と見積もられ、この値はCsHSO_4単体のものよりも高かった。また、界面相の厚みに関するパラメータmより、コア半径に対して5%程度の厚みの活性層が形成されていると見積もられた。
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