2007 Fiscal Year Annual Research Report
内殻励起状態の第一原理計算法の開発とX線分光スペクトルへの適用
Project/Area Number |
19019001
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
五十嵐 潤一 Ibaraki University, 理学部, 教授 (20127179)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 学 群馬大学, 工学部, 准教授 (50250816)
長尾 辰哉 群馬大学, 工学部, 准教授 (00237497)
西川 裕規 大阪市立大学, 理学研究科, 講師 (60373239)
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Keywords | 第一原理計算 / 内殻励起スペクル / 内殻光電子分光 / 共鳴非弾性X線散乱 / 電荷励起 / 直交定理 / 重なり積分 |
Research Abstract |
内殻励起スペクトルの第一原理計算の確立をめざして、内殻正孔ポテンシャルの遮蔽効果を研究し以下の成果を得た。 1.前年度に引き続き、La_2CuO_4のCu K吸収端近傍における共鳴非弾性X線散乱(RIXS)スペクトルをTight-binding模型を用いて詳しく解析し、その入射エネルギー及び偏光依存性の全容を解明した。中間状態に存在する正孔ポテンシャルを遮蔽するたあにCu 3d電子による電荷励起が形成され、終状態に残る。基底状態はハートレーフォック近似に基づき、電荷励起に対しては乱雑位相近似(RPA)を用いて電子相関を取り扱った。実験との定量的一致をみるためにはRPA効果を取り入れることが必要であることも明らかになった。この研究成果は、第一原理計算の有力な方法であるLDA+U法やGWA法を用いた計算への第一歩と考えられる。 2.X線光電子分光(XPS)スペクトルの第一原理計算プログラムの開発をすすめた。またそのプログラムを用いて、強磁性Fe ls, 2s, 3s内殻XPSスペクトルの解析を行い、実験結果をよく説明した。この方法は以下の手続きに従っている。光電子の生成により内殻正孔ができたときのポテンシャルのもとで、1電子波動関数をバンド計算により求める。その結果をもとに電子分布を変えることで励起状態を構成する。内殻正孔のない1電子波動関数との重なり積分を計算することで、XPSスペクトルを求める。内殻正孔1個を合むスーパーセルを用いたAPW法により計算を行う。この成功により、多くの内殻XPSスペクトルの第一原理計算への道が開けたと考えられる。
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