2008 Fiscal Year Annual Research Report
新規光学活性N4配位子R-BINAN-R'-Pyの開発とその錯体の触媒機能
Project/Area Number |
19020023
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
北村 雅人 Nagoya University, 物質科学国際研究センター, 教授 (50169885)
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Keywords | 窒素系配位子 / Ph-BINAN-H-Py / ルテニウム / 不斉水素化 / 反応機構 |
Research Abstract |
柔軟性の高い対称性配位子は活性種の単一化と基底状態から遷移状態への円滑移行に効果的である。ビナフチル基はその代表的骨格であり、3, 3'位への置換基の導入はその程度をより一層高めると同時に立体選択性にも大きな影響を与える。当研究室で開発したPh-BINAN-H-Py(3, 3'-ジフェニル-N2, N2'-ビス(ピリジン-2-イルメチル)-1, 1'-ビナフチル-2, 2'-ジアミン)配位子はその有効性がケトン類の不斉水素化において実証されている。本年度は、(1)R-BINAN-R'-Pyの構造と活性・選択性相関、(2)分光学的手法による反応経路や触媒サイクル内の錯体構造情報の獲得の二項目に焦点を置き研究を推進した。 (1) に関して、高い反応性と選択性を得るためには、3, 3'位のフェニル置換基が必須であり、最高99.5 : 0.5の鏡像異性体比で対応するアルコール体へと変換されることを確かめた。3, 3'位にPh置換基がないと、化学収率は29%、不斉収率は55%まで低下した。(2) に関して、水素化経路を証明するため、まず重水素標識実験を行い、水素移動ではなく水素化であることを確認した。実際の反応系で調査可能なNMR実験、速度論実験により、1) 水素化条件でも配位子と触媒前駆体は独立に観測されること、2) 時間-変換率曲線は指数関数的であること、3)反応の最終段階でほぼ直線となること、4) 基質の初期濃度を高くするに従って反応速度が低下することを確かめた。錯体の構造的知見を得るために、Ph-BINAN-H-Pyおよび[Ru(C_6H_6)(CH_3CN)_3](PF_6)_2からカチオン性Ru錯体を別途合成した。nOe実験により溶液中での構造がcis-aであり、結晶中でも分子構造はcis-aであることを確認した。新規な窒素系キラル配位子を活用した本法は水素化研究に新展開をもたらすだけでなく、窒素系配位子を用いた触媒開発の原動力となろう。
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Research Products
(10 results)