Research Abstract |
レドックス活性化に基づく不活性炭素化合物の高効率分子変換を達成するために,多段階のレドックス過程を有し,かつ環境への負荷が小さいバナジウムに着目し,新規バナジウム単核錯体触媒を用いた分子変換反応を行った。バナジウム錯体触媒による炭素-炭素二重結合化合物の酸化的分子変換では,工業的な応用について検討するため,共酸化剤としでは市販の過酸化水素水を用い,二重結合化合物の酸化的分子変換について検討した。その結果,効率的な触媒活性が観測され,反応温度90℃,反応時間2時間で炭素-炭素二重結合の酸化的開裂が可能であることが明らかとなった。炭素-炭素単結合,炭素-水素結合の酸化的開裂反応では,1,2-ジフェニルエタンを選び,同様の条件で反応させたところ,単結合が酸化的に開裂し,対応するベンズアルデヒドが39%の収率で得られることが明らかとなった。一方,炭素-水素結合の開裂実験としでは,テトラリンについて反応を行ったところ,対応するテトラロンが25%の収率で得られ,炭素-水素結合の酸化的開裂も可能であることが明らかとなった。以上はバナジウムを用いるレドックス酸化系による分子変換であったが,本研究ではさらに希土類によるレドックス還元系を用いる分子変換についても検討した。すなわち,炭素-フッ素結合,炭素-炭素結合の還元的活性化反応では,サマリウム光触媒系において炭素-フツ素結合を還元的に開裂させ,二酸化炭素固定化をともなった変換が可能となった。以上のように当該領域研究め推進に寄与する研究成果と考えられる。
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