Research Abstract |
強ひずみ加工材における摩耗組織の比較データ取得を目的として,Al-Al_3Ti傾斜機能材料を用いて摩耗試験を行い,形成した変質層の微細組織を調べた.その結果,厚さ約100μmの変質層は,摩耗距離100m以上にて摩耗表面に形成した.変質層の組織は,微細な繊維状Al_3Ti粒子と平均結晶粒径16nmの超微細粒からなる母相によって構成されることが分かった.また,超微細粒を有する母相は,TiがAlに過飽和に固溶した過飽和固溶体であり,かつ一部分がアモルファス化していた.さらに,変質層近傍のせん断ひずみをAl母相結晶粒の形状から計算した結果,変質層はせん断ひずみがδ=90以上で形成することが分かった. 加えて本研究では,板状Al_3Ti粒子を有するAl-Al_3Ti合金に対して,異なる加工ルートで繰返し押出し加工(ECAP)を施し,その加工ルートが材料組織および摩耗特性に及ぼす影響を調べた.ECAPで用いた加工ルートはRoute AおよびRoute Bcである.Route Aは同一方向に加工を繰返し施す方法であり,Route Bcは1回の加工ごとに試料を90°回転させながら加工を施す方法である.そのため,Route Aはひずみが一方向に導入されるが,Route Bcは4回の加工でひずみが均一に導入される.組織観察を行った結果,Route Aで加工を施したAl-Al_3Ti合金は微細な粒状Al_3Ti粒子が一列に配列した組織を有していた.一方,Route Bcにて加工を施したAl-Al_3Ti合金の組織は,微細な粒状A1_3Ti粒子が均一に分散した組織を有していた.それゆえ,Route Aにて形成する組織は,Route Bcに比べて異方性の大きい組織であることが分かった.しかしながら,これらの材料に対して摩耗試験を行った結果,材料内部における摩耗特性の異方性は小さいことが分かった.
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