Research Abstract |
セル構造およびサブグレインの自己組織化を表現する反応一拡散方程式を導出し, 転位の反応速度係数および拡散係数を各すべり系の活動状況を考慮してモデル化した. また, 反応一拡散モデルの簡素化を図り, 応力の増加に伴って拡散係数のみを変化させることにより転位パターニングを表現した. さらに, 転位密度の基準値を幾何学的に必要な(GN)結晶欠陥密度から推定することによって, 変形場と転位場を連成させたマルチスケール結晶塑性モデルを構築した. 本モデルを用いて, 結晶の変形に対するFEM解析および転位組織形成に対するFDM解析を行い, すべり系の活動状況に対応した転位パターンを再現した. さらに, 巨大圧縮ひずみを付与したFCC多結晶平板を想定し, FCC結晶の12すべり系を考慮した擬似3次元結晶塑性解析を行った. その結果, サブグレイン壁に沿った小傾角粒界が大角化してマイクロバンドが発現し, マイクロバンドで囲まれたサブグレイン群がラメラ状サブディビジョンへ発展する過程を再現した. 以上の数値解析に基づいて, 巨大ひずみによって誘起される超微細粒の創製メカニズムの初期プロセスについて考察した. 一方, 微細粒金属の特異な力学特性を表現するために, 転位の微視構造, 結晶粒構造および巨視構造という3階層を橋渡しするトリプルスケール転位-結晶塑性モデルを構築した. その際, 低転位密度の微細粒では塑性変形の素因となる転位の枯渇から流れ応力が変形の初期において-時的に増加することを表現できる新たな臨界分解せん断応カモデルを提案した. また, 全転位密度の定義には, GN転位密度およびGN不適合度を採用した. 以上のモデルを用いて, 初期粒径および初期転位密度の異なるFCC多結晶に対してFEM解析を実施し, 超微細粒金属における寸法効果ならびにFCC微細粒焼鈍材に発現する降伏点降下現象およびLuders帯の伝ぱを再現した.
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