2007 Fiscal Year Annual Research Report
TEM内その場ナノインデンテーションによる巨大ひずみ材料の変形挙動解析
Project/Area Number |
19025013
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
大村 孝仁 National Institute for Materials Science, 新構造材料センター, 主任研究員 (40343884)
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Keywords | ナノインデンテーション / 走査プローブ顕微鏡 / 巨大ひずみ加工 / 純アルミニウム / 緒晶粒 / 転位 / 格子欠陥 / 塑性変形 |
Research Abstract |
巨大ひずみ加工によって創製される材料は、付与されたひずみ量の増加とともに組織が大きく変化し、強度特性も変化する。本研究では、純アルミニウムに巨大ひずみ加工を施して結晶粒を超微細化させた材料について、マクロ強度の発現に寄与する強化因子を解析するため、結晶粒径よりも小さな領域の変形特性をナノインデンテーション法で評価した。用いた試料は、純アルミニウム(99.99%A1(4N-A1))にECAPで巨大ひずみ加工を施したものである。 ECAP8パス材におけるナノインデンテーション測定後の走査プローブ顕微鏡(SPM)像には、粒径1μm程度の結晶粒と三角形の圧痕が明瞭に観察された。圧痕の大きさは、三角形の1辺が約400nmであり、結晶粒の中心付近に位置決めして測定されているので、結晶粒内の変形が支配的な条件であることが確認できる。ナノインデンテーション測定で得られる典型的な荷重-変位曲線を、以下の3つのケースに整理した。特徴的な挙動として、負荷曲線上にpop-inと呼ばれる不連続点が現れるが、3つのケースはそれぞれ、pop-inが顕著に現れる場合、ほとんど表れない場合、それらの中間的な挙動として区別される。pop-inの発生機構は、負荷した圧子の直下で転位が生成/増殖する挙動と理解されており、初期の転位や転位源の密度が小さいほど顕著に現れることが知られている。上述の結果は、結晶粒によって欠陥密度にばらつきがあることを力学的な挙動から示した例であり、強加工を施した材料においても、部分的には転位密度の低い領域が形成されていることを示唆している。また、最大荷重に対応する塑性深さ(塑性硬さに対応)の平均値を比較すると、負荷過程のpop-in挙動とは無関係にほぼ同じ値となった。これは、変形が連続的に進行する場合と不連続的に進行する場合とで、塑性域全体の平均的な抵抗に差がないことを意味している。これらの結果は、巨大ひずみ材料の組織の特徴と変形挙動の関係を直接結びつける知見として重要である。
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