2007 Fiscal Year Annual Research Report
新規な分子空孔の設計に基づく含カルコゲン元素相乗系化合物の創製
Project/Area Number |
19027017
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
後藤 敬 Tokyo Institute of Technology, 大学院・理工学研究科, 准教授 (70262144)
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Keywords | 有機元素科学 / 酵素モデル / 分子空孔 / セレン化合物 / ヨウ素化合物 / 甲状腺ホルモン / ヨウ化セレネニル / X線結晶構造解析 |
Research Abstract |
生体内では、複数の高周期典型元素の相乗効果が機能の発現に重要な役割を果たしている例が多く見られる。しかし、高周期典型元素相乗系化合物の中には、人工系では二量化や不均化、自己縮合などを起こしやすいために不安定な化学種が多くある。タイプ1ヨードチロニン脱ヨウ素化酵素(ID-1)は、セレノシステイン残基を活性中心として甲状腺ホルモン前駆体であるチロキシンの脱ヨウ素化を触媒する。しかし、その触媒サイクルの機構解明は、ヨウ化セレネニル(R-Sel)中間体の不安定性ために従来極めて困難であった。本研究では、ナノスケール分子空孔を活用することで中間体の安定化も図り、仮説として提唱されてきた反応機構の各過程を直接的に検証した。まず、独自に開発したナノスケールのボウル型立体保護基(Bpq基)を活用し、セレノールとN-ヨードスクシンイミドとの反応によりヨウ化セレネニルを安定に合成・単離し、結晶構造を明らかにした。次に、ID-1触媒サイクル第1段階のモデル反応として、Bpq基をもつセレノールをチロキシンモデル化合物のジョードフェノールに作用させたところ、対応するヨウ化セレネニルおよびモノヨードフェノールの生成が確認された。これは、セレノールによるジョードフェノールの脱ヨウ素化が可能であることを示した初めての例である。続いて、第2段階のモデル反応として、Bpq基をもつヨウ化セレネニルとチオールとの反応について検討した。種々のチオールとの反応について検討した結果、還元力が強いジチオスレイトールを用いた場合にヨウ化セレネニルがセレノールまで還元されることを見出した。以上の結果から、ID-1触媒サイクルとして提案されてきた各化学反応過程の存在が初めて実験的に示された。
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Research Products
(16 results)