2007 Fiscal Year Annual Research Report
相補的な立体制御分子変換を実現するビスメタル化触媒の開発
Project/Area Number |
19028027
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大村 智通 Kyoto University, 工学研究科, 助教 (00378803)
|
Keywords | 合成化学 / 立体化学制御 / 遷移金属触媒 / 付加反応 / 立体異性体 / 有機ホウ素化合物 / 有機ケイ素化合物 |
Research Abstract |
多置換アルケンの異性体を効率的かつ立体選択的に作り分けるための新手法の創出を目的として、アルキンのシリルホウ素化において相補的な立体化学制御を達成する触媒系の開発に取り組んだ。まず、ケイ素上にクロロ基を有するシリルボランを用いて、パラジウム触媒による末端アルキンのシリルホウ素化を検討した。シリルボランに対しアルキンを小過剰量用い、付加完了後にクロロシランからアルコキシシランへの変換反応を行ったのち解析を行ったところ、予想されたシス付加生成物である(Z)-1-ボリル-2-シリル-1-アルケンが選択的に高収率で生成した。一方、アルキンに対しシリルボランを小過剰量用いて同様の反応を行ったところ、立体選択性が完全に逆転し、(E)-1-ボリル-2-シリル-1-アルケンが高選択的に生成することを見出した。反応の詳細について検討を行ったところ、アルキンとシリルボランのいずれを過剰量用いる条件においても付加はシスの様式で進行しており、シリルボランを過剰量用いた場合のみZ体からE体への異性化が進行することが明らかとなった。次に反応機構に関する検討を行ったところ、パラジウム錯体、シリルボラン、アルコールから異性化に活性な触媒種が形成されることが明らかとなった。立体相補的なシリルホウ素化は、第一級アルキル基を有する末端アルキンに有効であり、またクロロ基やシアノ基のような官能基が分子内に存在してもこれらに影響を受けることなく反応が進行し、対応するZ体およびE体の付加生成物を立体選択的に合成することができた。本手法の有機合成的有用性を明らかとするために、三置換スチルベン誘導体の立体選択的合成への応用を検討した。ホウ素とケイ素の反応特性を活用しパラジウム触媒炭素-炭素結合形成反応を行うことにより、全ての位置・立体異性体の選択的合成が達成できた。
|