2007 Fiscal Year Annual Research Report
かご状シロキサン関連化合物への水素挿入反応に関する理論的研究
Project/Area Number |
19029007
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
工藤 貴子 Gunma University, 大学院・工学研究科, 教授 (10137911)
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Keywords | シルセスキオキサン / POSS / 水素挿入反応 / 分子軌道計算 |
Research Abstract |
優れた機能性分子として知られる、かご状シロキサン化合物であるシルセスキオキサン,「(RSiO_<1.5>)_n;n≧4」,の更なる新しい機能性を探るため、分子の内孔を利用した水素挿入反応機構および水素貯蔵分子としての可能性について、分子軌道計算による研究を行った。今年度は、ケイ素上の水素以外の置換基効果,および、T_<14>やT_<16>といった大きなかご構造における複数の水素挿入反応および包摂化合物の安定性の検討に重点を置き、可能な限り精度の高い計算レベルを用いて研究を進めた。 まず、ケイ素上の置換基効果を明らかにするため、CH_3,SiH_3,F,Liを取りあげ、立方体構造を持つT_8-(HSiO_<1.5>)_8-への水素挿入反応のエネルギー障壁や包摂化合物の安定性を水素体の場合と比較した。その結果、メチル基やシリル基のかご構造とエネルギー障壁に対する影響は小さいが、フッ素や特にリチウムでは水素体と比べて大きな差異をもたらすことが分かった。フッ素置換体では水素体よりSi-O結合長は短くなり、リチウム置換体では逆に長くなる。その結果前者では立方体の面およびかご全体は収縮し水素挿入は困難になり、後者では面とかご全体が拡大し、水素挿入は容易になる。更にリチウムはケイ素から酸素に転移した構造が安定で、この事もかごの拡大に寄与する。 一方、大きなかご構造を持つT_<14>とT_<16>は、D_4,D_5,D_6といった環状シロキサンの面から構成される多面体で、これらの異性体の内ではD_6より小さな環から構成されるものがより安定であることが明らかになった。これは実験結果とも一致する。更にこれら大きな分子は2個以上の水素分子を安定に包摂する事が可能で、反応のエネルギー障壁は挿入する面の大きさに、また、包摂化合物の安定性はかご全体の大きさに依存するという、小さいかご構造と同様の傾向を示した。
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Research Products
(15 results)