2007 Fiscal Year Annual Research Report
過渡赤外分光法を用いた分子内電荷移動反応における微視的溶媒和の解明
Project/Area Number |
19029031
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
石川 春樹 Kobe University, 理学研究科, 准教授 (80261551)
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Keywords | 分子内電荷移動反応 / クラスター / 過渡赤外分光 / 励起状態 / 溶媒再配向 |
Research Abstract |
本研究課題では分子内電荷移動(ICT)反応における溶媒和の影響を分子レベルで解明することを目的とした。分子クラスターを用いることによって,溶質分子極近傍の溶媒がICT反応に与える影響を詳細に調べることができ,その結果は理論研究とも直接比較できるものになるので,ICT反応の溶媒和についてより進んだ議論が可能になると期待される。本研究ではフェニルジシランの溶媒和型クラスターを対象とした過渡赤外分光を行い,ICT反応速度や溶媒再配向過程,CT状態の安定化などが溶媒分子によってどのように変わるかという微視的な溶媒和の情報を調べた。先に測定した水の場合,過渡赤外スペクトルにおける溶媒である水分子のOH伸縮振動バンドの時間変化から溶媒の再配向を確認したが,今回はシアノフェニルジシラン分子のCN伸縮振動について測定を行った。その結果,種々の溶媒分子で2つのCN伸縮振動バンドが過渡赤外スペクトルに現れ,それらのバンドの相対強度の時間変化から溶媒再配向が起こっていることがわかった。以前のCT蛍光測定による研究では,アセトニトリルクラスターで比較的遅いICT反応速度が得られていた。当初は溶媒再配向時間を含んでいるためと考察していたが,過渡スペクトルの結果を併せて考察すると,ICT反応速度自身が遅くなっていることが明らかとなり,溶媒和による電子状態の安定化の違いによると考えられる。今後さらに研究を進める上で,過渡赤外分光とCT蛍光分光を組み合わせたような手法により,電子状態のエネルギー関係を明らかにする必要がある。
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