2007 Fiscal Year Annual Research Report
πラジカルの光励起高スピン状態に対する置換基効果の研究
Project/Area Number |
19029039
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
手木 芳男 Osaka City University, 大学院・理学研究科, 教授 (00180068)
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Keywords | 光励起高スピン状態 / πラジカル / 置換基効果 / スピン整列 / 系間交差 / 時間分解ESR / 電子供与基 / 電子アクセプター |
Research Abstract |
本研究課題では,光励起高スピン状態を形成する安定πラジカルに電子供与性のメトキシ基等を付加した分子を合成し,置換基が光励起高スピン状態の形成に及ぼす効果を明らかにすることを目的として以下の研究を行った。 (1)光励起状態に対する置換基効果 申請計画に従い,光励起高スピン状態を形成するアントラセンーフェルダジルラジカルに化学修飾により電子供与性を有するメトキシ基を置換基として導入した分子を合成し,置換基が光励起高スピン状態の形成に及ぼす効果を研究したが,残念ながらこの系では光励起四重項状態は検出されたが,元の親分子と比べてスペクトルのパターンに顕著な変化は見られなかった。一方,ピリジニル基を導入した分子では時間分解ESR測定により,一窒素原子の位置の違い(トポロジーの違い)が励起高スピン状態の形成に影響を及ぼす事を見出した。4-ビリジル基を付加した分子では,元の親分子と比較して信号強度が低下し,また微細構造定数Dの値も若干(6%程度)減少したのに対し,3-ビリジル基を分子では逆の効果が見られた。この事は,ピリジル基の窒素原子の位置による影響と考えられ,まだ定量性等に問題点を残しているが,小さいながらも励起高スピン状態の形成効率あるいは系間交差のスピン副順位選択制に対する置換基効果が観測されたと考えている。 (2)光励起高スピン状態の理論計算による研究 機能性部位としてアントラキノンを導入した分子の基底状態と光励起四重項状態を分子軌道計算により明らかにし,この分子のESRおよび時間分解ESRの結果を矛盾なく説明することができた。また,密度行列法による高スピン状態のESRスペクトルの一般的シミュレーション法の開発も行った。
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