2007 Fiscal Year Annual Research Report
チオール修飾魔法数金クラスターの電子・幾何構造とチオール構造の相関の解明
Project/Area Number |
19029042
|
Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
根岸 雄一 Institute for Molecular Science, 物質分子科学研究領域, 助教 (20332182)
|
Keywords | チオール保護金クラスター / 魔法組成 / 特異的安定性 / 電子構造 / 光学活性 |
Research Abstract |
これまでの研究において、18個のチオールで保護された金25量体Au_<25>(SR)_<18>が熱力学的・化学的に極めて安定な化学種であることを見いだし、さらに、フォトルミネッセンス、磁性、キラリティーなど、バルク金にはみられない特異的な性質を有していることを明らかにした。本課題では、この魔法組成Au_<25>(SR)_<18>クラスターの基本的性質を理解して、また高機能化への手段を探索することを目的として研究を行い、以下の二つの成果を得た。 1)特異的安定性の起源の解明:まず、クラスターの安定性が電荷状態に対してどのように変化するのかについて調べた。その結果、Au_<25>(SR)_<18>は+1価から-1価の間では荷電状態によらず安定に生成することが分かり、総価電子数がAu_<25>(SR)_<18>の安定性の直接的な決定因子ではないことが明らかになった。一方、Au_<25>(SR)_<18>の幾何構造については、Auコアの周囲を-Au-SR-オリゴマーが隙間無く取り囲んだ構造が理論予測されている。そこで次にAu_<25>(SR)_<18>についてメスバウアー分光やLDI質量分析などの幾何構造に関する実験を行ったところ、こうした理論予測された構造を支持する結果が得られた。以上の結果をもとに、Au_<25>(SR)_<18>は、Auコアが周りを覆う金-チオラート錯体により完全遮蔽された幾何構造をとるため、化学的・熱力学的に極めて安定化していると結論した。 2)配位子交換による構造変形の誘起:グルタチオン(GSH)保護Au_<25>(SG)_<18>の配位子を、分子骨格の大きく異なるメルカプトこはく酸((SA)SH)で連続的に置き換え(Au_<25>(SG)_<18-n>(S(SA))_n)、その金コアの電子構造や光学活性を連続的に変化させることに成功した。以上の結果は、Au:SRクラスターにおいてはチオール分子の骨格構造も電子/幾何構造・機能を決定する重要な構造パラメーターとなっていること、またAu_<25>(SR)_<18>の高機能化には配位子交換反応が有効な手段の一つであることを強く示している。
|
Research Products
(4 results)