2008 Fiscal Year Annual Research Report
窒素固定生物群集の多様性が海洋表層の物質循環に及ぼす影響
Project/Area Number |
19030005
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
古谷 研 The University of Tokyo, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (30143548)
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Keywords | 窒素固定 / 貧栄養海域 / シアノバクテリア / nifH / 定量PCR |
Research Abstract |
熱帯・亜熱帯南北太平洋においてTrichodesmium、グループAシアノバクテリアおよびナノシアノバクテリアの3群のnifH遺伝子コピー数を定量PCRで解析した結果、3群とも表層極大型の鉛直分布であったが、地理分布は異なった。Trichodesmiumは調査海域全般にわたって広く分布し、最大値はフィージー付近の1.7×10^6コピーL^<-1>であった。フィリピン海では昼間にnifH遺伝子の発現が確認された。グループAシアノバクテリアは、0.2-10μmおよび10μm以上の画分で検出され、亜熱帯海域に分布し、最大値2.1×10^5コピーL^<-1>が検出された。黒潮域では昼間にnifH遺伝子の発現が確認された。ナノシアノバクテリアは、10μm以上の画分で検出され、亜熱帯海域に分布することが明らかになった。窒素固定活性の調査から北太平洋亜熱帯域では、広範な海域にわたりナノシアノバクテリアが主要な窒素固定者であることが明らかになった。この海域ではナノシアノシアノバクテリア以外にも小型の窒素固定者が存在し、有意な窒素固定活性を有することが示された。一方、ミクロプランクトンサイズの窒素固定者、Trichodesmium spp,およびR.intracellularisは、東シナ海および島周りなど比較的局所的に高い活性を示した。また、ミクロプランクトンの窒素固定量が高い測点では、小型窒素固定者の窒素固定量が相対的に低く、両者は異なる環境条件要求性をもつことが示唆された。Trichodesmium spp.やR.intracellularisは、小型窒素固定者に比べてリン酸塩濃度が高く、成層が発達した海域で卓越したことから、光環境やリン酸塩供給が両者の分布の違いの一因であることが示唆された。
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