2008 Fiscal Year Annual Research Report
曲面としての細胞膜における膜の曲率依存的なシグナル伝達機構
Project/Area Number |
19036002
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
伊藤 俊樹 Kobe University, 医学研究科, 准教授 (30313092)
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Keywords | F-BARドメイン / チロシンキナーゼ / 生体膜 / 曲率 / 細胞内情報伝達 |
Research Abstract |
Ferチロシンキナーゼのアミノ末端領域を用いて生体膜に対する結合アッセイを行ったところ、F-BAR/EFCドメイン(アミノ末端側300残基)よりもC末端側の270-445アミノ酸領域(ドメインX)において高い脂質結合能が見出された。直径の異なるリボソームを用いて結合アッセイを行ったところ、興味深いことに、F-BAR/EFCドメインは直径約1-10μm程度の大きなリボソーム(LMV)により強く結合したのに対し、隣接するドメインXは50-200nm程度の小さなリボソーム(SUV)に高い親和性を示した。すなわち、Ferのアミノ末端領域には二種類の異なる生体膜の曲率センサーが存在すると考えられた。次に、Ferのキナーゼ活性に対するリボソーム添加の影響を検討したところ、LMVは高濃度下でわずかにFerを活性化したのに対し、SUVは強い活性化能を有することが明らかとなった。この結果は、FerのドメインXを介した曲率の高い生体膜との相互作用がチロシンキナーゼの活性化に重要な役割を担うことを示しており、本課題が想定した「生体膜の曲率依存的なシグナル伝達機構」の存在を強く示唆するものであった。COS7細胞におけるGFP-Ferの過剰発現は、Vav2およびCortactinのチロシンリン酸化とそれに伴う葉状仮足(ラメリポディア)構造の形成を誘起した。F-BARドメインを欠損した変異体(Fer△F-BAR)、およびドメインXを欠損した変異体の過剰発現ではこのようなラメリポディアの形成は観察されなかった。以上の結果から、細胞膜の曲率依存的にFerが活性化され、Vav2(RacGEF)やCortactin(アクチン重合タンパク質)のチロシンリン酸化を通じたアクチン細胞重合を引き起こし、細胞の形態変化を誘導する分子モデルを打ち立てることに成功した。
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Research Products
(6 results)