2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19038026
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
前島 一博 The Institute of Physical and Chemical Research, 今本細胞核機能研究室, 専任研究員 (00392118)
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Keywords | 分裂期染色体 / ヒトゲノム / 電子顕微鏡 |
Research Abstract |
染色体は細胞が分裂する際、複製された遺伝情報(DNA)を2つの娘細胞に正確に分配するために必須な構造体である。それでは、分裂期染色体はどのようにして1本の長いクロマチン繊維から折り畳まれているのだろうか? 直径2nmのゲノムDNAはまず、塩基性蛋白質のヒストンに巻かれて、ヌクレオソームと呼ばれる直径約11nmの構造体になる。このヌクレオソームが折り畳まれて直径約30nmのクロマチン繊維になり、さらに折り畳まれて直径約0.7μmの分裂期染色体を作るとされている。その凝縮過程は全くの謎であり、長年に渡って生物学者たちの興味を集めてきた。古くから提唱されているモデルでは、「30nmのクロマチン繊維が、100nm、200-250nmと、らせん状の階層構造を形成しているのではないか」と予想している。この問いに答えるため、私たちは、ドイツEMBLグループと共同で、分裂期染色体のクライオ電子顕微鏡観察(CEMOVIS)をおこなった。CEMOVISは,「生きた」状態に近い細胞内微小構造を観察するためのほとんど唯一の手段である。すると驚いたことに、ヌクレオソームの直径に相当する11nmより大きな構造は、30nmクロマチン繊維も含めて検出されなかった。しかしながら、顕微鏡観察は試料中における観察範囲が限定され、内在する規則性構造の全体像を捉えることが非常に困難である。このため、私たちはSpring-8 BL45XUでX線小角散乱解析(SAXS)をおこなっている。SAXSは、計測したい非結晶試料にX線を照射し、その散乱パターンからその試料に内在する構造や規則性を知る手段である。SAXSをもちいても同様な結果が得られている。
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