Research Abstract |
CASはチラコイド膜に局在するタンパク質で,細胞外Ca^<2+>が誘導する気孔の閉鎖運動と細胞質Ca^<2+>スパイクの発生に関係している。CASは約240kDaの複合体としてチラコイド膜のストロマ側に存在し,Ca^<2+>結合,あるいはチラコイド膜を介したCa^<2+>輸送の制御に関わっている可能性が考えられる。葉緑体ストロマのCa^<2+>濃度は,明所で育てた植物を暗所に移すことで20-30分後をピークにした一過的上昇を示す。今回,この暗処理で誘発されるストロマCa^<2+>濃度の一過的変動が,cas変異体では小さくなることを明らかにした。この結果は,CASがストロマCa^<2+>レベルの制御に直接関わっている可能性を示す。また,CASがリン酸化タンパク質で,光依存的なリン酸化を受けることも明らかにした。CASの機能は光による制御を受けている可能性が示唆される。 植物細胞がストレスや感染にさらされると,光合成の阻害や葉緑体での活性酸素種の生成が起こる例が知られているが,その機構はよくわかっていない。本研究では,葉緑体内Ca^<2+>レベルを測定する系を確立し,ストレスや感染防御応答における葉緑体Ca^<2+>レベルの変動を測定した。その結果,塩,浸透圧,過酸化水素など,様々なストレスシグナルに応答して,ストロマCa^<2+>濃度の一過的上昇が見られることが明らかになった。また,ストロマCa^<2+>シグナルはエリシター処理によっても誘導された。flg22やキチンなどのエリシターを処理すると,細胞質Ca^<2+>レベルは2〜3分の早い変動を示す。一方,葉緑体では10〜15分かけてゆっくりと上昇するCa^<2+>濃度変動が見られた。エリシター活性を持たないペプチドには応答しなかった。従って,エリシターシグナルの受容に引き続き,その情報を葉緑体に伝える未知のシグナル伝達系が存在することが示唆された。
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