2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19040017
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
高橋 淑子 Nara Institute of Science and Technology, バイオサイエンス研究科, 教授 (10183857)
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Keywords | EMT / Shh / Rho / Ras / ECM |
Research Abstract |
脊椎動物の初期発生過程において、生殖巣と腎臓(中腎)は隣接して形成される。このとき、体腔上皮とよばれる組織に由来する細胞は、このどちらの組織にも参画する。生殖巣には上皮から脱上皮をおこした細胞が、また中腎を取り巻く組織には上皮のままの細胞が参画する。そこで本年度は、細胞の上皮化一脱上皮化という観点から生殖巣の成り立ちを解析した。具体的には、中腎をとりまく上皮(腎体腔上皮とよぶ)から人工的にEMTをおこす条件を探し、EMTをおこした細胞が生殖細胞としての分化形質を発現するかについて調べた。腎体腔上皮からEMTを誘導する能力を有する分子として、これまでにRhoA、Snail2,Shh,Gliなどを見いだしている。カドヘリンやCdc42については、機能阻害をした場合にEMTがみられたことから、上皮細胞の維持に重要であると思われる。そこで今年度は、これらの分子を中心としたシグナルカスケードの解析を行った。RhoAの下流では大きく3種類のシグナル経路が知られているが、特にMAPキナーゼを介する経路がEMT誘導に関わっている知見を得た。次に、腎体腔上皮とそれを裏打ちする基質との相互作用に注目した。この場合の基質とは、異なる組織(中間中胚葉)に由来する組織であり、そこには腎細管などの構造が詰まっている。そこで腎細管を含む中間中胚葉由来の組織をトリ胚操作により除去したところ、腎体腔上皮の構造が不安定になった。加えて、先述のSnailによるEMT誘導効率が有意に上昇した。これらのことから、上皮の維持には、それを裏打ちする基質が重要な役割をもつことがわかった。このような相互作用を実際の生体内で示した例はほとんどなく、新規の知見である。
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Research Products
(15 results)