2007 Fiscal Year Annual Research Report
トキソプラズマ原虫と宿主間での脂質代謝ネットワークの解明
Project/Area Number |
19041008
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Research Institution | Obihiro University of Agriculture and Veterinary Medicine |
Principal Investigator |
西川 義文 Obihiro University of Agriculture and Veterinary Medicine, 原虫病研究センター, 准教授 (90431395)
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Keywords | トキソプラズマ / 脂質代謝 / コレステロール / アポトーシス / プロテオーム / 抗原虫薬 / カルシウム |
Research Abstract |
本研究の目的は、トキソプラズマ原虫の脂質代謝機構の持つ生物学的および生理学的意義と宿主への相互作用を解明することにある。本年度は、トキソプラズマ感染による宿主細胞の脂質代謝の変化を明らかにし、原虫の新規宿主代謝関連因子の候補分子の同定を行った。 1.トキソプラズマの感染により、マクロファージ内に過剰な脂質の取込みが確認され、細胞内コレステロールの増加が認められた。細胞内コレステロール量は、HMG-CoAレダクターゼの発現上昇、LDL受容体とスカベンジャー受容体の発現量が増加に関係していた。これら受容体のノックアウトマウス由来マクロファージにおける原虫の増殖は抑制された。さらに、コレステロール吸収阻害剤は、in vitroおよびin vivoで抗原虫作用を示した。 2.トキソプラズマ感染による宿主細胞内の過剰な脂質の取込みは、アポトーシスを誘導する可能性が示唆された。原虫感染は非感染宿主細胞にアポトーシスを誘導することが明らかとなった。トキソプラズマ完全長cDNAデータベースの解析によりアポトーシス促進因子(TgPDCD5)を新規に同定し、生化学的解析によりその機能を明らかにした。 3.プロテーム解析により、カルシウム依存的に分泌される新規分子(TgSPATRとROP9)を同定した。これら分子は、原虫の宿主細胞への侵入と宿主細胞内での増殖に関与している可能性が示唆された。 また、電子顕微鏡を用いた免疫染色により、TgPDCD5とROP9は原虫の脂肪滴に局在する可能性が示された。今後、これらの原虫由来分子と宿主脂質代謝の相互作用について研究を進める予定である。また、今年度の研究により、脂質代謝を制御する薬剤が抗トキソプラズマ作用を示すことが明らかとなったため、抗原虫薬との可能性とその作用機序についての研究も進める。
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