2008 Fiscal Year Annual Research Report
トキソプラズマ原虫と宿主間での脂質代謝ネットワークの解明
Project/Area Number |
19041008
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Research Institution | Obihiro University of Agriculture and Veterinary Medicine |
Principal Investigator |
西川 義文 Obihiro University of Agriculture and Veterinary Medicine, 原虫病研究センター, 准教授 (90431395)
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Keywords | トキソプラズマ / 脂質代謝 / コレステロール / アポトーシス / プロテオーム / 抗原虫薬 |
Research Abstract |
本研究計画では、人獣共通感染症を引き起こすトキソプラズマ(Toxoplasma gondii)に注目し、原虫-宿主間での脂質代謝ネットワークの解明を目指している。 トキソプラズマの感染により、感染初期では宿主細胞(マクロファージ)のコレステロール合成に関与するメバロン酸経路が活性化され、感染後期では宿主細胞のコレステロールの取り込みが促進されていた。この結果は、トキソプラズマが増殖時期に対応して宿主のコレステロール代謝を調節し原虫の増殖に利用していることを示唆している。上記の代謝制御に関与するトキソプラズマ由来のタンパク質に注目し、トキソプラズマの可溶性タンパク質ライブラリーによるスクリーニングおよび比較プロテオーム解析を実施することで、原虫の分泌小器官から生産される3種類の候補分子を同定した。これら候補分子は、LDL受容体の発現を上昇させる、原虫の脂肪滴に局在する等の特徴を有していた。さらに、コレステロール代謝阻害剤は抗原虫作用を有していたことから、宿主の脂質代謝は新しい抗原虫の薬剤ターゲットになる可能性が示された。 また、トキソプラズマ感染による宿主脂質代謝の変化は、宿主細胞死に関与していた。感染初期での細胞死はIFN-γにより誘導される一酸化窒素の作用が関与していたが、感染後期での現象はトリアシルグリセロールの過剰な蓄積が起因していた。しかし、この細胞死の現象は上記の因子単独によるものではなく、原虫由来因子が補助的な作用をしている可能性が示唆された。そこで、トキソプラズマの完全長cDNAを作製し、in silico解析を行ったところ、アポトーシス促進活性を有する分泌タンパク質を見出した。このタンパク質の活性は、組換えタンパク質および過剰発現原虫株を用いた解析により確認することができた。 以上の研究成果により、トキソプラズマは自身の増殖に有利なように宿主の脂質代謝を制御し、非感染細胞には細胞死を誘導することが明らかとなった。
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