2008 Fiscal Year Annual Research Report
溶血レンサ球菌が産生するNAD分解酵素による毒性発現機構の研究
Project/Area Number |
19041063
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Research Institution | Fukui Prefectural University |
Principal Investigator |
木元 久 Fukui Prefectural University, 生物資源学部, 准教授 (70283166)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤井 豊 福井大学, 医学部, 准教授 (80211522)
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Keywords | 溶血レンサ球菌 / ストレプトリジン / NAD分解酵素 / コレステロール / タイプIII分泌系 |
Research Abstract |
本研究の目的は、溶血レンサ球菌の病原性機構を分子レベルで解明し、効果的な治療法や新しい医薬品の開発に応用することである。溶血レンサ球菌はヒトへの感染に重要な毒素を細胞外へ分泌しており、これらの毒素が感染症の発症には重要であるが、特にNAD分解酵素(NADase)を中心に毒性発現機構を解析した。 グラム陽性菌である溶血性レンサ球菌は硬くて厚い細胞壁を持つため、これが障害となってグラム陰性菌のような直接毒素を宿主細胞内に送り込むタイプIII分泌系を使うことができない。そこで分泌型毒素であるストレプトリジンO(SLO)が宿主細胞膜上に形成した孔から、NADaseのような毒素が細胞内に移行していると推測される。しかしながら、細胞膜上に孔を形成しただけでは、毒素分子を細胞内に効率よく導入することはできない。そこで、さらなる機構が存在しているのではないかと考え、NADaseとSLOの分子間相互作用について詳細に解析した。その結果、(1)NADaseとSLOは弱い複合体を形成、(2)SLOと同様にNADaseもコレステロールと弱く結合、(3)コレステロールはSLO活性を阻害するがNADase活性には影響しないことなどを明らかにした。 以上の結果から、細胞外へ分泌されたSLOとNADaseは、ヒト細胞膜上の脂質ラフトと呼ばれるコレステロールに富む領域で濃縮され、SLOが細胞膜上で形成する孔よりNADaseが細胞内へ効率よく移行することが示唆された。SLOがコレステロールに結合するとコンフォメーション変化が起こることが報告されており、これによりNADase-SLO複合体が解離するのではないかと考えている。また、申請者らはNADaseの阻害剤に関する特許を取得した。本研究により得られた成果は、溶血レンサ球菌感染症を理解するために重要な知見であり、新しい治療法や薬剤開発への応用が期待される。
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Research Products
(2 results)