2007 Fiscal Year Annual Research Report
回転分子モーターの動力学計算と自由エネルギー変換メカニズムの解明
Project/Area Number |
19042020
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
高野 光則 Waseda University, 理工学術院, 准教授 (40313168)
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Keywords | FoF1-ATP合成酵素 / 1分子計算機実験 / 分子動力学 / 立体構造 / ファインマンラチェット / ブラウニアンモーター / 自由エネルギー変換 / 分子機械 |
Research Abstract |
ATP合成酵素はF1とFo部分からなり,Fo部分は膜内外のプロトンの電気化学ポテンシャルを利用して回転する回転モーターだと考えられている。本研究では,"1分子計算機実験"によって,この自由エネルギー変換マシンの動作機構の解明を目標としている。 まず,Fo分子内のプロトン径路について調査し,プロトンがa-subunitから進入(過去の実験結果と一致),その後,a-subunitの旋回によってc-ringとの間に一時的に形成される径路を通ってc-ringに移動すること(新たなゲート機構),a-subunit内を貫通しないこと(ボトルネックが存在)等が分かった。しかし出口についてはまだ良く分からない。プロトン流とa-subunitの揺らぎがカップルしていることが示唆されたので,a-subunitの揺らぎを活性化させると何が起こるかを調べたところ,熱平衡状態では約30°のステップ状の回転拡散を示していたc-ringに一方向性が生じることが分かった。すなわちブラウニアン(ファインマン)ラチェット機構がFoには備わっていると考えられる。また,cAsp61あるいはaArg210を中性化させると一方向性が消失した。 同様の1分子計算機実験をF1部分についても行った(つい最近の1分子実験によってF1にもブラウニアン・ラチェット機構が存在する可能性が示された)。回転子γ-subunitは熱平衡状態ではステップ状の回転拡散(主ステップ幅120℃)を示したが,固定子のいくつかの主成分モードを選択的に励起させると回転に一方向性が生じることが見いだされた。これらの計算機実験では"揺らぎの活性化状態"を仮定したが,実際,そのよう状態が可能なのかという問題意識のもと,蛋白質立体構造の特徴抽出につなげる基礎研究を統計力学の観点から行った。
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