2008 Fiscal Year Annual Research Report
分子シミュレーションによる、DNA組換えをおこすモーター蛋白質の分子機構解明
Project/Area Number |
19042021
|
Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
石田 恒 Japan Atomic Energy Agency, 量子ビーム応用研究部門, 研究員 (60360418)
|
Keywords | ホリデイ構造 / RuvB / 分子動力学シミュレーション / 主成分解析 / 分岐点移動 / 自由エネルギー面 / RuvA / 酸性アミノ酸 |
Research Abstract |
本研究では、蛋白質RuvBが関与するホリデイ構造の分岐点移動の仕組みを明らかにすることを目的とする。 ホリデイ構造モデルとしてRuvA8量体-2RuvB6量体-ホリデイ分岐DNA複合体のモデルを作成し、その分子シミュレーションを実行した。分子動力学は5ナノ秒以上実行した。ホリデイ構造モデルの全体運動を主成分解析したところ、RuvB6量体とDNAがカップリングして、DNAが移動するモードを観測することができた。 更にDNAの組換えを誘導しながら、そのエネルギー面を解析するアンブレラサンプリングシミュレーションを実行した。X線立体構造では、ホリデイ分岐点付近に4つの不対塩基が観測されている。まず、DNA組換えの初期段階では、ホリデイ分岐DNAの伸縮ステムのホリデイ分岐点に近い塩基対の水素結合が壊れて新たに4つの不対塩基が生成されることで、合計8つの不対塩基が現れた。次に8つの内の4つの不対塩基がRuvAの酸性ピンと呼ばれる高度に保存されたグルタミン酸、アスパラギン酸と強く相互作用した構造をとった。この酸性ピンはホリデイDNAの分岐点を広げ分岐点移動を促進する役割を果たす重要な残基と考えられており、今回の解析でも酸性ピンの重要性が示唆された。さらにシミュレーションを続けると、4つの不対塩基は酸性アミノ酸から離れ、伸長ステムにおいて水素結合を形成した。この過程における自由エネルギー障壁は10-15kcal/mol程度であった。 以上から、RuvBは自らの構造を変化させ、DNAを分岐点移動自由エネルギーの障壁を超えさせることで、分岐点移動をおこすと考えられる。
|