Research Abstract |
温度の変化を検知するセルセンサー,TRPチャンネルが表皮細胞にも存在することが明らかになってきた。皮膚が高温に暴露される熱傷では,急速に表皮と真皮の間に水疱が形成される。表皮と真皮の結合に重要な分子はBP180であり,このBP180切断を担うのが,表皮細胞へのカルシウムの流入で活性化される膜プロテアーゼADAM17である。そこで,表皮が高熱に暴露された時に,温度を検知するTRPチャンネルセルセンサーが作動し,表皮細胞に急速なカルシウムの流入が起こり,それによりADAM17が活性化される。その結果,BP180が切断され,表皮と真皮の間に急速に水疱が形成され,表皮細胞が冷却される,と予想した。本研究の目的は,外界の温度変化を表皮真皮解離に変換する機構における,TRPチャンネル,ADAM17,BP180の相互的役割を解明することにあった。 平成19年度は、まず各種培養表皮細胞にて TRP分子の発現を検討した。その結果、TRPV4 mRNAがNHEK,HaCaT細胞で強く発現していることを明らかにした。また、TRPV4は,37℃以上でチャネルとしての機能が活性化されるのみならず,そのmRNAの発現も増加すること、並びに、表皮角化細胞の分化に伴って,TRPV4発現は減少することも示すことができた。この結果は、表皮細胞の機能や分化に、TRPV4が強く関連していることを示唆する結果であった。 また、ADAM17がBP180を切断する部位はBP180のNC16ドメインである。そこで,その部の除いたcDNAを作成した。そのcDNAを発現ベクターにいれ、その遺伝子を有するトランスジェニックマウスを作成した。次年度、そのマウスを解析する。
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