2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19045010
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Research Institution | The Graduate University for Advanced Studies |
Principal Investigator |
颯田 葉子 The Graduate University for Advanced Studies, 先導科学研究科, 教授 (20222010)
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Keywords | 遺伝子 / ゲノム / 遺伝子発現パターン / 霊長類 / 生息環境 / 感覚受容 / 進化 / 機能的制約 |
Research Abstract |
本研究計画は、生息環境の異なる霊長類に着目し、その温度受容体の進化をゲノムの塩基配列および遺伝子の発現パターンの比較の両面から明らかにすることを目的としている。 1)ゲノム配列の解析:ヒト、チンパンジー、アカゲザル、イヌのゲノムから当該温度受容体9種類のタンパク質コード領域の配列を集め、この4種の間でそれぞれの種分岐後に蓄積した同義置換と非同義置換の置換数を推定した。非同義置換数/同義置換数の比率をタンパク質のアミノ酸置換に対する機能的制約の指標として、これらの種分岐後にこの指標が変化したかどうかを調べた.その結果、9受容体のうち、ヒトでは4つの遺伝子(TRPV1,TRPV3,TRPM4,TRPM5)で機能的制約が大きく弛んでいることを示す数値を得た。同様にチンパンジーでも5遺伝子(TRPV1,TRPV3,TRPM2,TRPM4,TRPA1)で機能的制約が大きく弛んでいることが示唆された。しかし同様の解析で、アカゲザルでは機能的制約の弛みは確認されなかった。 2)遺伝子の発現パターンの比較:ヒトとチンパンジーの皮膚組織(真皮)で、当該温度受容体9種類のmRNAの発現の有無を比較した。その結果従来報告されていたTRPV1,TRPV3,TRPV4の他にTRPV2,TRPM2,TRPM4,TRPM5,TRPM8の発現がヒトの皮膚で確認された。一方チンパンジーではTRPM2を除いて、温度受容体遺伝子の発現がヒトと同様であるように見える。ただし、TRPM5はチンパンジーでのPCR増幅産物が大きい。TRPM2の発現が検出できないこととTRPM2の機能的制約がチンパンジーで弛んでいることと関わりがあるかもしれない。今後は、ヒトとチンパンジーの発現量の比較とアカゲザルでの発現パターンとの比較を行う予定である。
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Research Products
(4 results)