2010 Fiscal Year Annual Research Report
突然変異導入マウス作製による哺乳類ミトコンドリアゲノムの生理的役割の全貌解明
Project/Area Number |
19100007
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
林 純一 筑波大学, 大学院・生命環境科学研究科, 教授 (60142113)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
米川 博通 東京都臨床医学総合研究所, 基盤技術センター, センター長 (30142110)
|
Keywords | ミトコンドリア / 突然変異型mtDNA / 呼吸欠損 / ミトコンドリア病 / 病態モデルマウス |
Research Abstract |
研究実績1 高転移性マウス肺がんA11細胞のmtDNAのND6遺伝子にミトコンドリア呼吸酵素複合体Iの活性を低下させ,結果としてROS(活性酸素)の大量漏出と肺転移を誘導する体細胞突然変異(G13997A)が存在することを明らかにし、この体細胞突然変異(G13997A)を100%持つマウス(ミトマウス)の作出に成功した(FEBS Lett.2010)。さらに、このミトマウスが老化したときどのような表現型(疾患)を発症するか詳細に調べた結果に関し、論文準備中である。今後、がん多発マウスと交配することで、そのマウスが転移多発マウスになるか否かを検証する。 研究実績2 別のミトコンドリア遺伝子に病原性突然変異を持つmtDNAを導入した病態モデルマウス(ミトマウス)を作出するため、すでにミトコンドリア病の一つであるミトコンドリア脳筋症の原因となる病原性突然変異と同等の変異(G7731A)をtRNA^<Lys>遺伝子に持つmtDNA分子を100%持つ細胞を樹立し、この突然変異を導入したES細胞の樹立にも成功した。今後はこの変異をもつ新たなミトマウス作出を目指す。またそれ以外のミトコンドリア遺伝子に病原性が期待される突然変異をもつmtDNAの濃縮も完了する予定である。 研究実績3 研究実施計画1の成果がマウスだけでなくヒトの腫瘍にも当てはまるか否かに関し、ヒト乳がん細胞株を用いて調べた所、ヒトにも当てはまることを突き止めた.この成果は現在論文投稿中である。 研究実績4 研究実施計画1の際に、全く新しいmtDNAの生理機能を発見した。それはmtDNAの特殊な突然変異が自然免疫系によって認識され、腫瘍形成や転移結節形成が抑制されることであった。この結果を論文として公表し(J.Exp.Med.,2010)マスコミでも報道された。今後更にその仕組みの詳細を検討する予定である。
|