2011 Fiscal Year Annual Research Report
突然変異導入マウス作製による哺乳類ミトコンドリアゲノムの生理的役割の全貌解明
Project/Area Number |
19100007
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
林 純一 筑波大学, 生命環境系, 教授 (60142113)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
米川 博通 東京都医学研究所, 基盤技術研究センター, センター長 (30142110)
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Keywords | ミトコンドリア / 突然変異型 mtDNA / 呼吸欠損 / ミトコンドリア / 病態モデルマウス |
Research Abstract |
研究実績1 申請者らは3年前に、高転移性マウス肺がん細胞のmtDNA遺伝子にミトコンドリア呼吸酵素複合体Iの活性を低下させ、結果として活性酸素(ROS)の大量漏出と肺転移を誘導する病原性突然変異(G13997A)を100%持つマウス(ミトマウス)の樹立に成功した。しかし、このミトマウスは若年齢においては若干の高乳酸血症を発症しただけであった。またROSを漏出するにもかかわらず、老化が促進されることも無く約2年半の寿命を全うした。しかし、死因を調べると悪性Bリンパ腫になる頻度が変異を持たないマウスに比べ5倍も高かった。これは他の変異を持つミトマウスには見られなかった特徴であり、特定のmtDNA変異が腫瘍の発生を誘発することを世界で初めて直接的証拠を持って立証した。この研究成果は現在論文投稿中である。 研究実績2 ヒトでは変異を起こしたmtDNA遺伝子が異なると、異なる症状のミトコンドリア病になることから、別の遺伝子に病原性突然変異を持つmtDNAを導入したミトマウスの作出も急務である。すでにミトコンドリア病の一つであるミトコンドリア脳筋症の原因となる病原性突然変異と同等の変異(G7731A)をtRNA^<Lys>遺伝子に持つmtDNAを導入したES細胞とキメラマウスの樹立にも成功した。今後はこのキメラマウスを用いて新たなミトマウス作出と病態解析を目指す。 研究実績3 研究実施計画1の際に、全く新しいmtDNAの生理機能を発見した。それはmtDNAの特殊な突然変異が自然免疫系によって認識され、腫瘍形成や転移結節形成が抑制されることであった。これまでどの変異が認識されるかの特定が困難であったが、今回老化モデルマウスであるSAMマウスのmtDNAも自然免疫系に認識されることを明らかにすることができたことから、この変異を特定できる可能性が出てきた。
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