2007 Fiscal Year Annual Research Report
カーボンナノチューブ量子ドットと電磁波の相互作用に関する研究
Project/Area Number |
19101006
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
石橋 幸治 The Institute of Physical and Chemical Research, 石橋極微デバイス工学研究所, 主任研究員 (30211048)
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Keywords | カーボンナノチューブ / 量子ドット / 単電子輸送現象 / テラヘルツ波 / 光アシストトンネル / 量子応答 / 光サイドバンド / クーロン振動 |
Research Abstract |
本研究では、マイクロ波からテラヘルツにわたる広い周波数の電磁波とカーボンナノチューブ量子ドットのユニークな相互作用を調べることを目的としている。周波数帯によって調べる現象は異なるが、マイクロ波からミリ波帯では2重結合量子ドットとの相互作用を利用することにより、電荷型量子ビットへの展開をはかる。テラヘルツ帯では、テラヘルツ波との相互作用の基礎現象を調べ、コヒーレント量子操作とともにテラヘルツ波との量子的な相互作用を観測することを目指し、この周波数帯での新しい検出器への応用を目指す。本年度は、デバイス構造としては最も簡単な単一量子ドットとテラヘルツ波の相互作用について調べた。実験は、液体ヘリウム温度でカーボンナノチューブ単一量子ドットの単電子輸送特性がテラヘルツ波の照射によりどのように変化するかを調べた。その結果、テラヘルツ波の照射によって本来電流が流れないゲート電圧領域に、新しいピークを観測し、それが周波数を変えると移動することを見いだした。テラヘルツ波を照射しないときに現れるクーロン振動ピークと新しく現れたサイドピークの間のエネルギーは、照射した周波数に一致することから、このピークの起源は量子ドットの中の電子がテラヘルツ波の光子を吸収してドレイン電極にトンネルしたことによる、いわゆるテラヘルツ光アシストトンネルによることがわかった。また、サイドピーク高さとメインピーク高さのテラヘルツ強度依存性を調べたところ、強度の増加とともにメインピーク高さは減少し、サイドピーク高さは増加するという、超伝導接合でよく知られた光サイドバンドの形成を予言したTien-Gordonモデルで定性的に説明できることがわかった。テラヘルツ波光子の量子ドットによる検出(量子応答)はこれが始めてである。1電子帯電エネルギーがテラヘルツ領域にあるという、カーボンナノチューブ量子ドットの特長を生かした成果である。
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Research Products
(10 results)