Research Abstract |
様々な触媒的不斉合成反応における触媒活性と立体選択性の自在制御の実現を主眼として,本基盤研究では用いる配位子が触媒の活性および立体選択性に与える影響について系統的に調べ,目的の反応に適した不斉配位子の精密設計を目指す.この目的に到達できれば,従来の不斉配位子が十分に機能しない触媒反応においても高度な不斉化が現実のものとなり,様々な有用光学活性化合物の効率的合成が実現できる.また,一連の配位子の性質に関する研究は,触媒的不斉合成の枠にとどまらず,遷移金属錯体化学の分野で非常に有用な知見を与えることにもなる. 今年度に見つけた新しい触媒反応の代表として,(1)ロジウム触媒による末端アセチレンのα,β-不飽和ケトンへの不斉付加反応,(2)ロジウム触媒による新しいインダノン誘導体の不斉合成,(3)有機ホウ素化合物に代わり有機ケイ素化合物を用いたロジウム触媒によるα,β-不飽和ケトンへの不斉付加反応,(4)パラジウム触媒を用いたπ-アリルパラジウム中間体を経て進む環化付加反応とその不斉化,(5)白金触媒によるシリレンとα,β-不飽和ケトンの新しい付加反応,などが挙げられる.またホスフィンとオレフィンでロジウムにニ座配位する不斉配位子を用いた触媒反応の反応機構の研究や新しいキラルジエン配位子の合成,においても良好な成果を得た. これらの成果は,8報のアメリカ化学会誌(J.Am.Chem.Soc.)を含む約30報の論文として発表された.1年間の実験結果の論文数としては極めて多いものであり,満足度の高い一年間であった.
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