Research Abstract |
様々な触媒的不斉合成反応における触媒活性と立体選択性の自在制御の実現を主眼として,本基盤研究では用いる配位子が触媒の活性および立体選択性に与える影響について系統的に調べ,目的の反応に適した不斉配位子の精密設計を目指す.この目的に到達できれば,従来の不斉配位子が十分に機能しない触媒反応においても高度な不斉化が現実のものとなり,様々な有用光学活性化合物の効率的合成が実現できる.また,一連の配位子の性質に関する研究は,触媒的不斉合成の枠にとどまらず,遷移金属錯体化学の分野で非常に有用な知見を与えることにもなる. 平成21年度に得た代表的な研究成果として,(1)テトラフルオロベンゾバレレン骨格をもつ新しいキラルジエンの簡便な合成法の確立,(2)新しい骨格をもつボスフィン-オレフィン型不斉配位子の合成ルートの考案,(3)キラルジエン-ロジウム触媒を用いた置換アセチレンの不斉重合によるらせんポリマーの合成,(4)ロジウム触媒によるβ,β二置換α,β-不飽和ケトンへの有機ホウ素化合物の不斉共役付加反応によるβ位に4級炭素をもつケトンの不斉合成がキラルジエンを用いることにより実現された,(5)キラルジエン-ロジウム触媒不斉共役付加によるβ-アミノ酸の不斉合成,(6)キラルジエンを配位子とするイリジウム錯体がα,β,γ,δ-不飽和カルボニル化合物への不斉1,6-付加の良好な触媒となることを発見した,などが挙げられる.またπ-アリルパラジウム中間体を経て進む環化反応の反応機構を詳細に検討し,求核攻撃の位置選択性と配位子や求核剤の構造との関係を明らかにした. これらの成果は,6報のJ.Am.Chem.Soc.およびAngew.Chem.Int.Ed.を含む23報の論文として発表された.良好な研究成果が得られた満足度の高い一年間であった.
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