2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19105004
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
渡辺 芳人 Nagoya University, 物質科学国際研究センター, 教授 (10201245)
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Keywords | P450 / 酸化反応 / 過酸化水素 / 水酸化反応 / エポキシ化反応 |
Research Abstract |
昨年度の研究で、P450_<BSβ>に対してdecoy分子を用いることでオレフィンのエポキシ化やベンジル位の水酸化を達成していたが、分子レベルで、decoy分子の役割、基質非結合時に過酸化水素の消費を防ぐ作用機構は全く不明であった。そこで、基質非結合及びdecoy分子結合型P450_<BSβ>の結晶化に取り組んだ。最終的に、両者の結晶化及び構造解析に成功した。decoy分子としてヘプタン酸を取り込んだP450_<BSβ>の構造解析では、242番目のアルギニンの近傍にヘプタン酸のカルボキシル基に対応すると考えられる電子密度がみられ、ヘプタン酸のカルボキシル基が、長鎖脂肪酸のそれと同じようにO-O結合のイオン的解裂を促進していると考えられる。また、ヘプタン酸のアルキル鎖に対応する電子密度が見られないことから、アルキル鎖部分は固定化されずに揺らいでいることが示唆された。このことは、ヘプタン酸が水酸化反応を受けない事実を支持している。さらに、基質非結合P450_<BSβ>の構造と、上記構造および報告済みの基質結合型P450_<BSβ>の構造を比較したところ、i)基質結合チャネルのアミノ酸側鎖は、基質非結合時は柔軟な構造を取っているのに対し、基質結合により固くなること(基質の固定化)、ii)ロイシン70が、基質非結合では親水性チャネルを塞ぎ、基質およびdecoy分子結合型では親水性チャネルを解放状態にしていることが明らかとなった。このことは、基質非結合型では酸化剤である過酸化水素がヘム活性中心に入ることが出来ず、酸化反応は進行しないが、基質やdecoy分子の存在で過酸化水素が活性中心に取り込まれ、酸化反応が進行するという機構を示していると考えられる。
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Research Products
(14 results)