Research Abstract |
本年度はトラフグ成体の様々な部位の筋肉から,ミオシン重鎖サブユニット(myosin heavy chain: MYH)をコードするcDNA のランダムクローニングを行い,MYHアイソフォームの組成を検討した。その結果,速筋,遅筋および心筋において,複数のMYHアイソフォームが混在するが,その組成は筋肉間で異なることが示された。さらにノーザンブロット解析により,各アイソフォームのmRNA蓄積量を筋肉間で比較したところ,それぞれの筋組織で優先的に発現するアイソフォームとして,速筋ではMYH_<M86-2>およびMYH_<M2528-1>が,遅筋ではMYH_<M2126-1>および MYH_<M8248>が,心筋ではMYH_<M2126-1>が同定された。また,MYH_<M1034>は速筋と遅筋両方に発現していた。次に,発生期のトラフグの特定の筋線維で発現するMYHにつき,遺伝子の 上流配列をゲノムデータベースから抽出し,ゼブラフィッシュ胚を用いてin vivoレポーターアッセイを行った。遅筋と心筋に特異的なアイソフォームであるMYH_<M5>につき,翻訳開始点から上流4kbを連結したレポーターベクターの導入により,ゼブラフィッシュ胚の表皮直下の遅筋線維と,心室の心筋細胞でレポーター遺伝子の発現が観察された。さらに,欠損変異体を 導入することで,特異的な発現パターンは上流2kbのシス制御を受けることが示された。同様の解析を胚体速筋型のMYH_<M743-2>についても行い,ゼブラフィッシュ胚の頭部筋肉および体幹部の速筋に特異的なレポーター遺伝子の発現を 検出した。さらに,翻訳開始点から上流2kbがその発現に必要であることを示した。以上のように,ゼブラフィッシュの筋肉において筋線維特異的な転写を担う転写調節領域が抽出された。またトラフグのものが系統的に離れたゼブラフィッシュで働くことから,この転写調節機構は魚類に共通することが考えられた。
|