2011 Fiscal Year Annual Research Report
異物排出トランスポーターの構造・機能・制御と生理的役割
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19109002
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山口 明人 大阪大学, 産業科学研究所, 教授 (60114336)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中島 良介 大阪大学, 産業科学研究所, 助教 (20379100)
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Keywords | 異物排出タンパク / 多剤排出タンパク / AcrB / X線結晶構造解析 / 膜タンパク質結晶構造 / ペリスタポンプ機構 / マルチサイト結合 |
Research Abstract |
23年度には異物排出トランスポーターの新たな基質結合型結晶構造決定に成功し、異物認識排出機構における画期的なパラダイムシフトをもたらす成果が得られた。リファンピシン、エリスロマイシンという比較的大分子量の抗生物質の結合構造を決定したところ、これまでの基質結合ポケットの手前にもう一つのマルチサイト結合ポケットがあり、これまで「待機」とされていた段階で基質は手前のポケット(近位ポケット)に結合し、次の「結合」段階でこれまでのポケット(遠位ポケット)に送られることが明らかになった。基質はタンパク質の蠕動運動により近位ポケット→遠位ポケット→出口と送られるというペリスタポンプ機構が証明された。この成果は2011年12月のNature本誌(Vol.480,565-569)に掲載され、主要全国紙全てに報道されるなど大変反響を呼んだ、さらに、世界で初めて、異物排出タンパクの阻害剤結合構造の決定に成功した。その結果、これまで近位結合ポケットを構成する一部と考えられていたフェニルアラニンクラスターは、基質輸送経路から分岐した阻害剤結合ポケットになっていることが判明した。また、異物排出タンパクによる阻害剤感受性の違いは、この阻害剤結合ポケットの構造に基づくことが部位特異変異導入により証明された。このポケットは基質の結合には直接関与していないが、疎水的な雰囲気を作り出し、隣接する基質輸送ルートへの両親媒性基質の緩やかな結合に間接的に寄与するものと考えられる。このフェニルアラニンクラスターを構成する一部のフェニルアラニンをアラニンに置換すると、基質輸送活性が大きく低下するが、このときポケットのスペースに基質が引き込まれていることが構造シミュレーションで示唆された。トランスポーターへの基質の結合は弱いと認識されないが、強いと離れにくくなって輸送されにくくなる。ちょうど良いバランスが必要である。フェニルクラスターは両親媒性基質の認識におけるそのようなバランス調整に機能していると考えられる。この発見により、ユニバーサル阻害剤の開発に向かって大きく前進した。
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Research Products
(43 results)